冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
ご両親をホテルのエントランスまでお送りし、迎えの車に乗り込まれるところで最後の挨拶を交わした。
車が発車し、ホテルの門を出て行くのを見届けると、七瀬CEOが「お疲れ様」と私に振り向いた。
「無事、終わったな」
「はい」
緊張しっぱなしの時間だったけれど、間違いを犯していないかだけ心配だ。
七瀬CEOが思っていた通りに動けていただろうか。
「両親の様子を見ていても、君のことを気に入ったようだった」
「そうですか、それなら良かったです」
今回の〝設定〟では、私は今の自分自身と同じ七瀬ホールディングスの社員で、七瀬CEOの趣味であるという料理の教室で知り合ったということになっている。
趣味の場で出会ったのが偶然にも自社の社員だった、ということだ。
それにしても、七瀬CEOが料理が趣味だったのにも驚いたけれど、多忙な中で料理教室に通っていることも意外すぎた。
そんなイメージがまったくなかったからだ。
「あの様子なら、今後は縁談の話を持ってくることもなくなると思う。代わりに君との関係はどうなのかと聞かれることになると思うが、それはうまいこと話していけばいい」
今日の目的は、したくもない縁談から逃れるため。
真剣交際しているという相手に会い、結婚を勧めていたご両親も安堵したかもしれない。
息子が決めた相手なら任せようと、そう感じている空気は汲み取れた。
エントランス前で話していると、七瀬CEOの車が車寄せに着けられる。
ヴァレーパーキングサービスのスタッフが車を移動させてきたようで、七瀬CEOに声をかけにきた。