冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
マンション前に到着した車から七瀬CEOは降車し、すぐに後部座席のドアを開いた。
座席から荷物を取り出し、そのまま助手席側に回る。
彼にドアを開けてもらう行為がどうしても申し訳なくて、先に自分でドアをそっと開いた。
私がほんの少し開けたドアを、七瀬CEOが外側から大きく開く。
お礼を言って車を降りると、ホテルの紙袋がふたつ手渡された。
ひとつは会食前に着替えた自分の服が。もうひとつには箱が入っている。
「今着ている服は、そのまま受け取ってほしい。好みでなければ処分してもらって構わない」
「えっ……受け取るだなんて、こんな高価なものいただけません」
「今日の報酬にもならない額だ」
絶対にそんなことない。
私が一か月働いて買えるか買えないかに違いない。
報酬にもならないなんてそんなわけ……。
「返却されても処分するだけだ。だったら、少しでも着用する可能性がある君が持って帰ったほうがいい」
「そうですけど……私には、このような服を着て出向くような場がないですし」
私の言葉に七瀬CEOは微笑を浮かべる。
冷静に物事を見。据えている厳しい表情しか印象になかったけれど、今日は何度もこんな柔らかい表情を見せられて、今まで彼に対して持って印象がガラリと変わった。
冷血とか、人でなしとか、そんな言葉も聞こえてくるけれど、そんなことないんじゃないかって思えている。