冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
後方から聞き覚えのある声が聞こえてきて、驚いて振り返る。
私の出て来た社屋から現れたのは七瀬CEO。私たちが立ち話をしているそばまで来ると、向かいにいたふたりの顔に緊張が窺えた。
「どうした、彼らになにか言われたか」
私のすぐそばまで来た七瀬CEOが私の顔をじっと見つめる。
私の冴えない表情を見てなにか察したに違いない。
気遣いの言葉に目に涙が浮かびかけて、ごまかすように「いえ」とはっきり答える。短い返事と共に首を小さく横に振った。
「プライベートなことに口出しをする気はないが、君たちの人間性には残念なものがあるようだな」
揃ってあからさまにぎくりとした表情を見せたかと思えば、視線が落ち着かなくなる。
あからさまに挙動がおかしいふたりを、七瀬CEOはじっと見据えていた。
「彼女は俺にとって大事な人だ。これ以上、業務外で近づくことは控えてもらおう」
大事な人──。
思わぬ言葉を受けて、彼の顔を見上げる。
ついどきっとしてしまったけれど、特に深い意味はないはずだと気持ちを落ち着ける。
「まぁ、業務でも関わることは今後ないだろうけどな」
今さっきまで言いたい放題だったのが嘘のように黙り込んだまま、ふたりは頭を下げてその場を立ち去っていく。
夜の街に遠ざかっていくふたつの背中を見届けていると、「仕事上がりか」と七瀬CEOの声がした。