冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「お疲れ様です。どうされたんですか?」
ここのオフィスか、この近くに用があったのだろうか。
「どうって、一緒に食事がしたくて来ただけだが」
「そのためだけにですか?」
そう訊くと、七瀬CEOは不思議そうな表情を見せる。そして端整な顔に微笑を浮かべた。
「なんだその面白い疑問は」
「え……面白いですか? 私は単純に驚いてしまっているだけで……」
なにかのついでではなく、わざわざランチのためにここまで来たなんて驚きしかない。
相手はCEOだというのに、自分の距離感がバグってしまっているような気がして怖い。
「なにが食べたい」
「お任せします。食べられないものはないです」
「じゃあ、この向かいのビルに行こう」
並んでエントランスホールを歩いていきながら、耳の奥にこの間の言葉が蘇る。
『偽装婚約の相手として、関係を続けてほしい』
あのあと、私のお腹が鳴って場の空気は一転。七瀬CEOは展望エリアの下にあるフレンチレストランに食事に連れていってくれた。
他愛ない会話をしながら食事をし、その後は自宅マンションまで送り届けてくれた。
一見すれば、交際しているふたりの仕事後のプライベートな時間。そんな感じだった。
その後、七瀬CEOは一週間ほど出張で渡米すると連絡をくれた。
頭の片隅で、そろそろ帰国する頃だろうかと思っていた矢先のさっきの連絡だった。