冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~


「お盆休みも、仕事で帰れないって言うしかないかなって……」

「えー。でもさ、実家に帰省したくないわけじゃないし、ただお見合いを避けてるだけじゃん? そのせいで帰りづらいのは困るよね。その見合い話がなくならない限り、ずっと帰れなくない?」

「そうですね……」


 その通りだ。

 お見合いはしないとはっきり言っても、両親は聞き入れてくれなかった。

 おかげで実家に帰りづらくなっているのは間違いない。

 お見合い話が消滅しないと……。


「知花ちゃん、今いい人いないの?」

「……えっ」

「いればさ、ほら、ご両親にもお見合いはできないって強く言えるでしょ?」

「そういう相手は、いないですね……」


 そう答えながら、頭の中に七瀬CEOが浮かんできて、ごまかすようにビールジョッキを手に取り喉に流し込む。

 いやいや、なんであの方が出てくるの……!


『必要があれば、その見合いを中止にする手伝いもするぞ』


 初めて婚約者のフリをすることになったとき、彼はそんなことを言っていた。

 印象的で、その言葉は今でもはっきりと覚えている。

 だから今、彼のことが頭に浮かんだのかもしれないけど……。

 さすがに、七瀬CEOにお見合いを阻止してもらう依頼なんて私から頼みにくい。

 いくら手伝うなんて言われていても、さすがに……。


「そっかー。じゃあ、早いところそういう人を見つけて、ご両親には諦めてもらわなきゃねー」

「そうですね……なかなか、難しいと思いますが……」


 盆休みも近づく中で、今度はどう帰省しない理由を作ろうかと考え始めていた。

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