冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~
「お待たせしました」
そう言いながらも、母の顔には〝この方はどなた?〟とはっきり書いてある。
食事をする場所の案内はしたけれど、その場に誰か人を連れてくるとは伝えてなかったからだ。
「ご足労いただきありがとうございます。申し遅れました、わたくし──」
七瀬CEOは慣れた所作で名刺を取り出す。
「七瀬と申します」
「ご丁寧に、ありがとうございます。……ナナセホールディングスの、CEO!?」
名刺を受け取った両親は揃って目ん玉が落ちそうな顔を見せる。
「ご挨拶は席のほうでさせてください。どうぞ」
七瀬CEOが両親に入店をすすめ、スタッフが個室の席へと案内していく。
これから盛大な嘘をつこうとしていることに不安が募る。
そんな心情が顔に出ていたのかもしれない。七瀬CEOが私の背にそっと触れる。
『大丈夫だ』
そう言ってくれているような表情を目に、少しだけ心が落ち着いた。
個室に案内された両親は、揃ってカチコチに固まりながら席につく。
当たり前だ。
予告もなく突然現れたのは、娘の勤め先のCEO。
私が初めて七瀬CEOと対面して話したときも、きっと今の両親のように緊張していたのだろう。
スタッフからドリンクのオーダーを伺われ、動揺する両親に七瀬CEOが間に入ってくれる。