冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~


「お待たせしました」


 そう言いながらも、母の顔には〝この方はどなた?〟とはっきり書いてある。

 食事をする場所の案内はしたけれど、その場に誰か人を連れてくるとは伝えてなかったからだ。


「ご足労いただきありがとうございます。申し遅れました、わたくし──」


 七瀬CEOは慣れた所作で名刺を取り出す。


「七瀬と申します」

「ご丁寧に、ありがとうございます。……ナナセホールディングスの、CEO!?」


 名刺を受け取った両親は揃って目ん玉が落ちそうな顔を見せる。


「ご挨拶は席のほうでさせてください。どうぞ」


 七瀬CEOが両親に入店をすすめ、スタッフが個室の席へと案内していく。

 これから盛大な嘘をつこうとしていることに不安が募る。

 そんな心情が顔に出ていたのかもしれない。七瀬CEOが私の背にそっと触れる。

『大丈夫だ』

 そう言ってくれているような表情を目に、少しだけ心が落ち着いた。

 個室に案内された両親は、揃ってカチコチに固まりながら席につく。

 当たり前だ。

 予告もなく突然現れたのは、娘の勤め先のCEO。

 私が初めて七瀬CEOと対面して話したときも、きっと今の両親のように緊張していたのだろう。

 スタッフからドリンクのオーダーを伺われ、動揺する両親に七瀬CEOが間に入ってくれる。

< 79 / 172 >

この作品をシェア

pagetop