冷血CEOにバツイチの私が愛されるわけがない~偽りの関係のはずが独占愛を貫かれて~


 話し終えると、心臓がどきどきと鼓動しているのに気づかされる。

 一度は終わったはずの裕翔さんとの関わりは、なんだかんだ今も尚続いていて……。

 初めて執務室に呼び出され、婚約者としてご両親に一芝居を打ってほしいと言われたあのときは、私の中ではひとつの仕事、業務命令というつもりで挑んでいた。

 そこには、私の異動という条件も含まれていたのが大きい。

 無事に役目を果たし、いつも通りの日常に戻ると、あの一日は幻だったと思えるほど私には非日常の出来事として遠ざかり始めた。

 でも、終わったはずの縁は続いていて、今も私の日常に彼が存在している。それがやっぱり信じられない。


 誕生日を一緒に過ごすって、なんか特別みたいで勘違いしそうだな……。


 お互いに親に交際相手だと偽る関係となった今、裕翔さんとは秘密を共有する不思議な関係性となっている。

 はじまりは仕事の一部みたいに思っていたけれど、今はなんだかちょっと違っていて。


『特別に想い始めてる。それが大前提だ。誰にでもすることじゃない』

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