二匹の神使な妖獣からの溺愛が止まない
「どうやって閻魔様のところに行くの?」



何も知らない青蘭に、惺音が答える。



「あっちの世界に閻魔の政庁があるの。そこに行く」

「え~、あっちの世界行くの? 俺体力使うからやだな~…」

「あたしの妖力で連れてってあげるからわがまま言わないで!」



惺音はそう言って耳と尻尾だけ出して狐の姿になった。



それから、尻尾から毛を何本か抜いて、俺と青蘭に配る。



妖の世界。



それはこちらの世界と似て全く非なる世界。



同じ大地にあるにはあるが、こちらのものはあちらに見えないし、あちらのものも当然こちらには見えない。



そして、その妖の世界への行き方は2通りある。



1つ目の方法は、一番オーソドックスだが、自分の妖力の源――俺や惺音の場合は狐玉――を持って息を吹きかけて移動する方法。
これをすればすぐに世界は入れ替わる。



だが、二つの世界を行き来することは並大抵のことではないので、これはかなり体力を消耗するやり方。



もう1つは、複数の妖をひとりの妖がまとめて連れていく方法。



ひとりの妖の身体の一部(髪の毛でも尻尾の毛でもなんでもいい)を持ち、その上でその妖が1つ目のやり方を行えば、妖の身体の一部を持つ者はまとめてあっちの世界に行くことができる。



つまり、惺音は自分の身体の一部…尻尾の毛を俺たちに持たせることで、まとめてあっちの世界に送ろうとしてくれてるんだろう。



惺音くらいの妖力の持ち主なら行き来でそう簡単に体力は消耗しない。



ありがたくその恩恵にあずかるか…。



惺音が狐玉を取り出して、ふっと息を吹きかけた。



たちまち世界が変わる。



惺音の屋敷の庭だったそこは、こっちの世界での俺の親父の屋敷の庭。



そして、俺たちの姿も変わっていた。



背中くらいの長さだった惺音の黒髪は、身長よりも長い赤髪に。



そして、人間の世界では黒い短髪だった俺の髪は、白髪で惺音と同じくらいの長さ。



長い髪には妖力が宿る。



耳と尻尾もついていて、これが俺たちの完全体の狐の姿だ。



一方、青蘭は髪の長さはほとんど変わらない。



変わってるのは青に染まった髪と、立派な大きい青い翼。



「あと、ズボン履いてて見えないけど長~い尾がついてるよ。そこに妖力が宿ってるの。見る?」



青蘭はそう言ってズボンを下ろそうとする。



「見ねえよ!」



俺はそう言って青蘭の頭を殴った。



惺音は顔を赤くしている。



「あっそう。それより洋服じゃ窮屈~。着替えない?」

「じゃあ一回家の中に入ろう。どのみちこの服じゃこっちの世界では勝手が悪いしね」



そう言って俺たちは屋敷の中に入ることになった。
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