二匹の神使な妖獣からの溺愛が止まない
「蘭が俺に会いに来た。惺音をよろしくってそれだけ言って、惺音の寝顔見て帰ってったよ」

「…」

「蘭と何か話したんだろ? それで俺に会いに来た。違うか?」

「違く…ない」



あたしはドキドキしたまま、覚悟を決めてすぅっと息を吸った。



「煌…あのね」

「ああ」

「あたしってこんな性格だからいつも素直になれない。それでも、煌はそんなあたしを受け入れていつも側にいてくれた」



煌は黙ってあたしの話を聞いている。



あたしは心臓が口から飛び出そう。



「あたしのことをいつも元気にさせてくれて、笑顔にさせてくれて、心を動かしてくれるのは…煌なの」



胸がいっぱいで言葉が続かない。



次第に涙がこぼれてきた。



あたしはなんとかその言葉を口にした。



「煌のことが…好きだよ」



あたしがそれを言うと同時に、煌があたしのことをきつく抱きしめた。



それはあたしの心を温かく満たす。



涙があふれて止まらない。



「俺も…好きだよ、惺音。世界で一番、何にも代えられないくらい」



その言葉が信じられないくらいに嬉しくて。



あたしはもうどんな言葉も口にできなかった。



煌が体を離した。



それからあたしの頭に手をやって…。



「キスして…いいか?」



そうやって言うから、あたしは照れながら小さくうなずいた。



煌の顔が近づいてくる。



あたしもぎゅっと目をつぶる。



唇と唇が触れ合いそうだったその時…。



「煌様、お食事をお持ちし…失礼しました!」



女中が部屋の中に入ってきて慌てて部屋から出て行った。



残されたあたし、呆然。
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