二匹の神使な妖獣からの溺愛が止まない
「あなたたちは恋仲?」



その言葉に、惺音が目の前のナンテンと同じくらいにまた顔を赤くした。



朝からこんなに顔赤くしっぱなしで顔がこの色にならねえか心配だ…。



俺が惺音の代わりに「そうです」と答えた。



「そう、素敵なことね」

「いえ…」

「惺音がそういう相手を見つける歳になったなんて感慨深いわ。私も嬉しい」



そう言って笑顔を見せた。



「だけどね」



その顔が真剣なものに変わる。



「この世界は掟が多いの。あなたたちも知っているでしょう」



その言葉に俺たちは曖昧にうなずいた。



特に惺音は不安そうだ。



俺たちの仲に対して何か言われるんだろうか…。



「正式な神使ではないとはいえ、あなたたちは主と従者の関係。そのことは肝に銘じておいた方がいい。変に難癖をつけられないように、あなたたちの仲は隠しておいた方がいいわ。蓮麻にも黙っていなさい」



その言葉に、俺たちは神妙な顔でうなずいた。



考えてもみなかった、俺たちの関係が掟に触れる可能性があるなんてこと…。



黙ってしまった俺たちに、惺音の母親はさっと笑顔を戻した。



「なんて、こんな話をしに呼んだんじゃないの。惺音、あなたにこれをあげたくて」



そう言って机の上の盆栽を手で指した。



惺音は不思議そうな顔でそれを見る。



「あなたが生まれたときに記念に社に植えたの。これはそこから採れた実から育てた盆栽。私の部屋に飾っていたものだけどあなたにあげたくて。蓮麻にわざわざ社まで取りに戻らせたのよ」

「あたしが生まれたときに…?」

「そう。私はあなたのことをとっても愛していた。そのことをこうやって示したかったの。もらってくれるかしら」



母親の言葉に、惺音はやっぱり涙した。



この一週間で惺音の情緒は上下し放題だ。



良かったな、惺音…。
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