二匹の神使な妖獣からの溺愛が止まない

幸福

~惺音~

それから3年後。



「…ふぅ」



あたしは書いていた手元の手紙から顔を上げた。



翠が生まれて3回目の春。



毎日翠を思わない日はない。



煌がコーヒーを持ってあたしに絡みついてくる。



「書けたか?」

「書けないから離れてっ…」



翠のことが大切だということを少しでも伝えたくて、あたしは面会の他にこうして定期的に翠に手紙を書いている。



にしても、親になったってあたしはこうして煌に対しては素直になれないまま。



煌はそれを面白がってるけど。



あたしにベタベタとくっついてほっぺにチューしてくる。



恥ずかしいんですが…。



そんな今日は1か月に1回の翠との面会日。



「煌! 早く!」

「待て待て」



面会場所は蓮麻の屋敷。



あたしは煌と一緒に屋敷へ向かう。



(かか)様! (とと)様!」



すでに屋敷で待っていた翠があたしたちを見るなり走ってきた。



そして、途中で転ぶ。



「ウワーン!」



転んで大泣きした。



あたしたちは駆け寄って背中をさすってあげる。



「アハハ、大丈夫大丈夫」



翠は泣き虫だ。



「翠、祖母(ばば)様にわがまま言わずお利口にしてた?」



どうにか泣き止んだ翠を抱えて居間まで行って、畳に腰を下ろす。



翠はあたしにべったりとくっつく。
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