神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
俺はびっくりした。

魔導適性がないという理由で、ブラマンジュちゃんの弟が国外追放されたことに、じゃない。

その話を、ブラマンジュちゃんが平気な顔をして。

当たり前のことのように、平然と話していることに、驚いているのだ。

「私の一族は、上級魔導師こそ出したことがなくても、先祖代々、一族のほとんど全員が魔導師でした。それなのに、何の手違いか、弟には生まれつき、魔導適性がなくて…」

そういうこともあるだろ。

魔導適性の有無は、遺伝の要素が大きく関連していると言われているが。

しかし、遺伝だけが全てを決めている訳では無く。

魔導適性のない両親から、魔導適性のある子が生まれることもあるし。

その逆もまた然り。

結局のところ、その子に魔導適性があるかどうかは、ほとんど運なのだ。

その子が生まれ持った才能、素養と言うべきか。

右利きか、左利きか、みたいなもん。

どっちの手を利き手にするかなんて、自分じゃ選べないだろ?

それと同じで、魔導適性の有無も、自分では決められない。

これは生まれ持ったものだから、自分の意志ではどうにもならない。努力でどうにかなることでもない。

…つまり、ブラマンジュちゃんの弟に魔導適性がなかったのは、誰のせいでもないのだ。

ましてや、その弟本人には何の罪もない。何の責任もない。

…それなのに。

「魔導適性がないと判明してすぐ、両親は弟を国外追放したんです」

「…」

後で知ったことだが。

こういうことは、キルディリア魔王国では珍しくないらしい。

魔導師のみに人権があり、魔導師であることが絶対の価値観である、キルディリア魔王国では。

自分の血を継ぐ子供であろうとも、魔導師でなければ、それは何の価値もない。他人と同じなのだ。

「だから、今何処でどうしているのかは知りません。我が家は最初から3人兄妹だったと思って、」

「…君は、それで良いのか?」

俺はもう一度、彼女にそう尋ねた。

自分の弟だろ。

魔導適性がなくても、家族は家族だろ。

短い時間でも、姉弟として過ごした時間があるはずだろ。

それでも、魔導適性がないと分かった途端。

最早、生死すらどうでも良いと…そう思えるものなのか。

「…?良いも何も…。弟には魔導適性がなかったのだから、仕方ありません」

「…」

早い話が、「魔導師じゃないのが悪い」。

この国で起きている非魔導師差別の根拠は、常にそれだ。

「キュレム様、何故そのようなことを…?」

何故、じゃねぇんだよ。

俺がおかしいみたいに言うな。

あんたさんらの、偏りまくった価値観の方がおかしいんだよ。

「ルーデュニア聖王国では、違ったのですか?ルーデュニアも魔導師国家だと聞いていましたが…」

「ルーデュニア聖王国では…魔導師じゃないからって、国外に追い出されたりしないよ」

「えっ。そうなんですか?」

びっくりするんじゃねぇ。

当たり前だろ、馬鹿。

「魔導師も、魔導師じゃない人も…平等に、お互いに認め合って暮らしてるよ」

「魔導師と、非魔導師が平等に…?…どうやって…?」

どうやって…って言われても。

普通に暮らしてれば、自然とそうなるだろ。

むしろ、なんで魔導師じゃなかったら、「よし、差別しよう!」ってなるワケ?

同じ人間だろ?

魔法が使えなかったら、猿かチンパンジーにでも見えるの?

どんな目ぇしてんだよ。
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