神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
目が点になっているエリトール君に、ルイーシュが説明をした。

「ほら、よくあるでしょう?お洒落なカフェで、注文の仕方が分からない、ってこと」

「え…いえ、あの、」

「ナントカカントカほにゃららフラペチーノ、みたいな」

あー、分かる分かる。

…スターボックスだろ?

「サイズも、S・M・Lじゃないんでしょう?トールだのベンティだの…。小・中・大で良いじゃないですか」

「駄目なんだよ、ルイーシュ…。俺もそう思うけどな、ああいうハイソなコーヒーショップは…何もかもお洒落な言葉を使わなきゃいけないんだ」

スタボの注文方法、俺も未だに分かんねぇや。

「一番普通のコーヒーください」って言ったら、「どれですか?」って言われるんだろ?

どれだよ。

コーヒーも色々種類があるんだろ?

ブレンド、エスプレッソ、モカ、カフェラテ…もう意味不明だな。全然区別がつかない。

あと、期間限定のフラッペだかフラペチーノだか…。

で、それにチョコチップとか生クリームとか、色々トッピングも出来て…。

…駄目だ。未知の世界。意味不明。

俺がスタボになんか行ったら、メニューの前で立ち尽くして、店員に大迷惑をかけるか。

あるいは逆ギレして、「もう缶コーヒーで良いわ!」と、不貞腐れて自販機で買ってそう。

実は、未だにコンビニのレジ横コーヒーの買い方もちゃんと理解してない。

…え?田舎者?

…しばくぞ。

「…で、そんな本があるのか?」

「はい。注文の仕方から、カスタマイズの種類や方法、期間限定メニューの見分け方まで、ばっちり書いてありました」

「マジか…。なんだ、その有能本…」

俺も読んでみたかったよ。

今度貸してくれ。

「あの一冊で、ハイソなカフェの注文の仕方を完璧にマスターしました」

「そうか。じゃあ今度スタボに行ったら、ルイーシュに注文任せるわ」

…って、ほぼ行かんけどな。

だってさぁ…そういうカフェって、リア充の巣窟じゃん?

爆破してやろうか。

「やっぱり、『猿でも分かる!』シリーズは名著が多いな」

「まぁジュリスさんは、迷惑だって怒ってましたけどね。ベリクリーデさんが余計な知恵をつけて困る、って…」

「あぁ…。まぁ、あの子は元々そういう子だから…」

…っと、ついつい内輪の話で盛り上がっちゃったな。

ブラマンジュちゃん達を置き去りにしてしまった。

「…でもこの図書館って、魔導書しかないんだろ?」

「え?は、はい…」

「…ふーん…」

随分と、お堅い図書館なんだなぁ。

魔導書ばっか読んでるの、つまんなくない?

「…違う本は読まねぇの?『猿でも分かる!』シリーズとか面白いけど」

「さ、猿…?いえ、そのような…。魔導書以外の本は、特には…」

本当に、つまんない奴だな。

魔導書以外は低俗な本だって、ハナから決めてかかるのはどうかと思うぞ。

これがシルナ学院長だったら、魔導書に限らず、何でも好きな本を読むことを推奨していただろうな。

「そうか…。魔導科学の勉強をするのも良いけど。たまにはまったく違うジャンルの本を読むのも良いぞ。知見を広げる為にもな」

「そ…。そうですか。…ありがとうございます、参考にさせていただきます…」

「あぁ。そうすると良い」

参考にする、とは言ったものの。

エリトール君もブラマンジュちゃんも、全然納得してなさそうだった。

…これは読まないな。確実に。

…で、俺達をここに連れてきた、シディ・サクメは。

「…」

怪しむような、腹を探るかのような眼差しで、俺とルイーシュをじっと見つめていた。

その視線に、さすがの俺も気づいていたが。

図書館で乱闘騒ぎをする訳にもいかず、気付かないフリをしてやり過ごすことにした。
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