神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
一時間後。

俺とルイーシュは、シディ・サクメと共に、ファニレス王宮に辿り着いていた。

…相変わらず、今日もハリボテしてんな。この王宮は。

「…なぁ。ずっと気になってたんだけど」

俺は、ここまで俺達を案内しているサクメに言った。

「何ですか?」

「このハリボテ王宮、なんか意味があるのか?見栄を張るのも大概にしろよ」

「…」

俺がそう言うと、サクメは目を細めて。

じっと、俺を見つめ返した。

「…やはり、お気づきでしたか。この城を覆う幻覚魔法に…」

「気づくだろ、そりゃ…」

まぁ…この国の大概の魔導師…一般魔導師の皆さんは、なかなか気付かないかもしれないけど。

でも、見る人が見れば分かる、ってやつ。

「気付かない人が見れば、『わーすごーい。きれーい』って思うかもしれないけど。一度気づいたら、滑稽以外の何物でもないぞ」

何せ、見栄を張る為に、必死に見てくれだけ取り繕ってます、って公言してるようなものなんだからな。

…しかし。

そんな俺の、当然の辛辣な指摘に、シディ・サクメは耳を貸さなかった。

「我が国の威厳を保つ為にも、これは必要なパフォーマンスなのです。ご理解ください」

「…ふーん…」

パフォーマンス…。言ってしまえば、確かにその通りだな。

ハリボテパフォーマンスするくらいなら、ありのままの姿を見せた方が威厳があると、俺はそう思うけど。

ま、それはキルディリア魔王国の…ひいては、イシュメル女王の意志なんだろうから。

ルーデュニア人である俺が、口を挟むことではないな。

「…で、会わせたい人ってのは誰?」

「これからご案内致します。…ですがその前にまず、お二人に約束していただきたいことがあります」

は?

シディ・サクメは真剣そのものの表情で、眼光を鋭く光らせながら忠告した。

「これから会っていただく人物について…。口外することは、一切控えていただきます」

何やら、回りくどい言い方をしてるが。

要するに、「ここで起きたこと、見たことや聞いたことは、他言無用」。

絶対に、誰にも言うなと。

…そういうことだな?

一体、誰と会わせようとしているのやら…。

「…」

「…」

ちらりとルイーシュの方を見ると、ルイーシュも俺の方を無言で、じーっと見つめていた。

間違いなく、俺達は今、同じことを考えている。

「…馬鹿ですか?あなた」

ルイーシュが、サクメに向かって口を開いた。

「…はい?」

「あなたがここに、俺とキュレムさんを強引に連れてきたんじゃないですか。会って欲しい人がいる…なんて意味深なこと言って」

そう、その通り。

「で、いざ目の前まで来たら、今度は『ここで見たことは他言無用。約束してくれなきゃ困る』なんて…。…それなら最初から、連れてこなきゃ良いじゃないですか?」

その通りである。もっと言ってやれ。

一方的に俺達を連行して、その上また一方的に、「他言するなよ」と約束させ。

約束させないと信用出来ないんだったら、連れてくんなっつーの。

お前らの事情など知ったことか。
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