神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
イシュメル女王より、新たな使命を受諾した俺達は。

丁寧に挨拶して、王の間を後にした。




…俺達が去ってから。

王の間に、シディ・サクメが戻ってきた。

「…よろしいのですか?」

サクメは、イシュメル女王に尋ねた。

「何がじゃ?」

「あの者達は信用なりません。キルディリアへの亡命というのも口実で…。本当は、スパイとして我が国に潜入しに来ただけなのではないですか」

シディ・サクメは、ハナから俺とルイーシュのことを信用していなかった。

スパイではないかと、疑ってかかっていたのだ。

…正解なんだけど。

「ナツキ元皇王に会わせたことも…。陛下のご命令ですから従いましたが、この状態で彼らをアーリヤット領に行かせれば、むしろ、余計にアーリヤット領内で反乱の種を生み出すだけなのでは…?」

「…ふむ。そうじゃな、おぬしの言う通りよ」

本当にそうなれば、イシュメル女王にとって都合が悪いはずなのに。

女王は、余裕の表情を崩さなかった。

「だからこそ、奴らを試すのよ。もしあの二人がスパイなら、アーリヤット領に行かせれば、必ず動くじゃろう」

「…!敢えて、尻尾を出させるということですか」

「あぁ、そうじゃ。なに、わらわとて、初めから奴らを信用などしていない」

…っていうこの台詞を、俺が直接イシュメル女王から聞いていたら。

多少なりとも、ショック受けただろうなぁ。

これまでの必死の演技、何だったんだよ、と。

出来るだけ怪しまれないように、一生懸命頑張ったってのに。

「奴らをアーリヤット領に行かせるのは、奴らに尻尾を出させる為でもあり…。…目眩ましの為でもある」

「…目眩まし、ですか?」

「アーリヤット皇国の領土など、欲しければくれてやるわ。わらわの目的は一つ…。それを果たす為に、ルーデュニア人の奴らは邪魔なのじゃ」

そう言って。

イシュメル女王は、扇で口元を隠し、不敵に笑った。






…結局。

俺とルイーシュは、イシュメル女王の掌の上で、ころころと転がされていたに過ぎないのだ。

…今のところは、だが。

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