神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
お前ら、授業は…と、言いかけたが。

今日は祝日だから、授業はお休みだっけ。

でなきゃ、俺もシルナも学院の外には出てこないっての。

…それよりも。

「お前ら…。一体、何処に行ってたんだ…!?」

俺は、二人の姿を見て思わず、素っ頓狂な声を出してしまった。

二人共、泥まみれ、そして葉っぱまみれだった。

「え?山」

簡潔に、すぐりが答えた。

山って。

「何をしに…?」

「ほら、これ」

令月が、麻の布袋を見せてくれた。

そこには、たくさんの…。

…タケノコ。

「…何それ?」

「知らないの?タケノコだよ」

いや、タケノコは知ってるけど。

二人が麻袋に入れているのは、掘り立てのタケノコ。

まだ、泥や皮がついたままの、今まさに掘ってきました、という状態の…タケノコ。

それがどっさり。たくさん。

「どうしたんだ…?そのタケノコ…。何処から持ってきた?」

「掘ってきた」

「掘ってきた!?」

…タケノコを?

「ツキナがさー、『春になったら、タケノコご飯食べたいねー』って言ってたからさー。これはもう、掘るしかないなって思ってさ」

と、すぐり。

分かるよ、ツキナ。長い冬が開けて、暖かい時期になってきたら。

春の味覚…タケノコご飯…食べたくなるよな。

…でもな。

だからって、自分達で山に入ってタケノコを採ろう、とはならない。

普通に買いに行けよ。

「タケノコは急いで掘らないと、イノシシに横取りされちゃうからねー」

「早めに採っておいて良かったね」

「…」

…で、大量って訳ね。

…それは分かったけど、でも大問題がある。

「…お前ら、それ何処の山から採ってきた?」

「え?」

え?じゃないんだよ。

山って、大体、誰か持ち主がいるんだぞ。

そして、その山に生えているものは、原則、その持ち主のものだ。

故に、断じて。

人様の山に勝手に入って、勝手にタケノコを掘ってはいけないのだ。 

無自覚かもしれないけど、やってること泥棒と一緒だからな。

しかし、令月とすぐりは。

「…?何で?山に生えてる植物は、誰のものでもないよ」

「強いて言うなら、地球のものだよねー」

駄目だ。分かってない。

ジャマ王国ではそうなんだろう。多分。

地球のもの…まぁ、広義ではそうなんだが…。

イレースがこれを知ったら、二人共ただでは済まないだろうな。

「あのな…。そもそも、勝手に人様の山に侵入するのは駄目なんだよ」

「なんで?イノシシだって勝手に侵入してるじゃん」

そうだけど。

でも、お前らはイノシシじゃなくて。人間だろ?
< 173 / 328 >

この作品をシェア

pagetop