神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
待つこと、10分ほど。

その頃には、他のお客さんも食事を終えて。

そそくさと、逃げるように店を出ていった。

あんなにこそこそしなくて良いのに。

…あの人達、非魔導師なんだろうな。

元々、この店の常連客だったけど。

非魔導師ということで、お店に入れなくなってしまった。

それでも、人情味溢れる店主のおばちゃんは、新政府の方針に従わなければならないのは分かっていても。

これまでずっと、自分のお店に通ってくれていた常連のお客さんを、門前払いすることは出来ない。

そこで、彼らをこっそりお店に入れて、こっそり食事を提供していた。

…そういうことなのだろう。

そこに、突然魔導師証明書をぶら下げた、俺とルイーシュが現れたものだから。

店内にいた全員、死ぬほどびっくりしたんだろうな。

なんか、悪いことしたな…。

「あの…お待たせしました」

「おっ…来た来た。どうも」

常連客が、誰もいなくなったテーブルの上に。

俺のチキン南蛮定食と、ルイーシュの鶏天定食が並んだ。

メインのお皿には、分厚くてジューシーな衣をまとったチキン南蛮が、大ぶりにカットされて。

その上に、自家製らしいタルタルソースが、惜しげもなくたっぷりかけられている。

うはぁ、めっちゃ美味そう。

そこに、3種類ほどの、手作りらしい小鉢料理。

更に、ワカメと油揚げのお味噌汁と、大きめの茶碗に山盛りのご飯。

しかも。

「あの…ご飯はおかわり自由なので、どうぞお好きなだけ…」

なんていう、超絶神サービスまで。

もう無理。限界。

これは食べずにはいられない。

「それじゃ、いただきます」

俺は箸を手に取り、ご飯をかっ込んで、チキン南蛮を齧った。

最早、食レポする必要はないな?

想像通りの美味しさである。

「うっ…ん、め〜…。久し振りにまともなもの食った気がする…」

「最近、ずっと総督府にこもりっぱなしでしたもんね」

それな。

疲れた身体に、タルタルソースが沁み渡る。

「…この店、結構長いの?」

俺は、店主のおばちゃんに尋ねた。

「え?あぁ…はい。先代の…私の父の代から続いてて…」

出たよ。街定食あるある。

やっぱり、世代が変わっても、おふくろの味は変わらない。

自分、おふくろの味ってよく知らないけど。

「そっか…。じゃあ、さっきのお客さん達も…ずっと来てくれてる常連さんなんだ?」

「はい…。もう、30年くらいなりますかね…」

そりゃなげぇわ。

そこまで愛されるお店って、凄いな。

「30年か…。そんなに長く通ってた店に、突然入れなくなったら…誰だって嫌だよな」

「…」

「こんな美味い定食屋なんだから、魔導師だろうと魔導師じゃなかろうと、誰でも食べれば良いのに…」

美味いぞ?このチキン南蛮。

食べてみ?飛ぶぞ?

魔導師だとか、魔導師じゃないとか、そんなことどうでも良くなるから。
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