神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
しかし、エリトール君は何とか食い下がろうと。

「で、ですが…。魔法を使用する際は、原則、その魔法の魔導理論を習得してから…」

「そんなの適当ですよ。適当」

「てっ…適当っ…!?」

エリトール君の言う通りである。

魔法というものは、その根底にある魔導理論を理解し、自分のものにしなければ、それを魔法に昇華することは出来ない。

例えるなら、魔導理論は、魔法の設計図のようなものだ。

設計図を理解していないと、物を組み立てることは出来ない。

だから、すべての魔導師にとって。

魔導理論を習得することは、魔法を使う為に必要不可欠なのだ。

エリトール君も、幼い頃から、ありとあらゆる魔導理論を学び、会得し。

設計図を充分理解した上で、初めてその魔法が使えるようになった。…はずだ。

それなのに、今、その原則が、根底から覆されようとしている。

「魔導理論の理解なんて、適当で良いんですよ。大事なのは『それっぽさ』です」

「えぇっ…!?」

「だって、魔導理論の勉強って、面倒じゃないですか」

それは同意。激しく同意。禿同。

だけど、それをしないと普通、魔法は使えないからな。

嫌でも、魔導師なら、魔導理論の勉強をしなければならないのだ。

その必要不可欠な勉強を、「面倒」と吐き捨てる男、ルイーシュ。

「で、ですが…。魔法を使う為には…魔導理論の魔導書を読んでから…」

「魔導書?俺、そんなのほとんど読んだことありませんよ?」

「えっ!?」

魔導書を読まない魔導師、ルイーシュ。

…基本、何事に対しても面倒臭がりだからな。

学生時代からペアを組まされていたから、よく分かる。

こいつ、マジで全然魔導書読まねーの。

たまに気まぐれに手に取って、気まぐれにハマれば、気まぐれに読むこともあったけど。

興味がなかったら、手に取ることさえしない。

「でも…ルイーシュ様は、空間魔法の魔導書を執筆されてましたよね?」

自分は本を読まない癖に、本を書くことはする男、ルイーシュ。

「あれは何となく、です」

「なっ…!?」

「そして、暇潰しです」

「ひっ、暇潰しっ…!?」

暇潰しで魔導書を書く男、ルイーシュ。

…それでちゃんと書けてるんだから、凄いよな。

何故その才能を、少しでも性格の方に活かしてくれなかったのか。

天は二物を与えないんだなぁ。

「故に、難しい本を読むのも、魔導理論の勉強をするのも無駄です。何となくやってりゃ、何となく、いつか出来るようになります」

それはお前だけだよ、ルイーシュ。

大抵の人は、何となく、だけじゃ出来るようにならないっての。

「と、いう訳で。俺から教えることは何もありません」

「え、えぇ…」

…残念だったな、エリトール君。

こんな適当男に教えを乞うなんて、愚かなことをした君が悪いよ。

そして、それは。

ブラマンジュちゃん、君にも言えることだからな。

「…ブラマンジュちゃん」

「はい?」

「残念だが、俺も似たようなもんだ」

「は、はいっ…?」

俺は少なくとも、ルイーシュほど、面倒臭がり適当人間ではないと自負しているが。

使っている魔法の「適当加減」に関しては、ルイーシュと似たりよったりだから。
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