神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
あの人達、折角真面目に訓練に励んでいたところだったのに。

追い出しちゃって、悪いことしたな…。

俺は申し訳無さのあまり、気分が悪かったけど。

ブラマンジュちゃんとエリトール君は、むしろ、心なしか嬉しそうだった。

それもそうだろう。

「上級魔導師様」から直々に指南を受けるのは、専属見習い魔導師の特権。

他の奴らに邪魔はさせないし、横取りも便乗もさせない。

…と、言ったところだろうか。

気持ちが分からないこともないが…。

…そんなに期待されてもな。

「…それで?俺、何を教えれば良いんだ?」

何を知りたいんだ?ブラマンジュちゃんは。

俺から教わることなんて、何もないと思うけどな。

「そうですね…。やはり、一番教わりたいのは…キュレム様のような、繊細で緻密な、魔力の使い方でしょうか」

「…」

出たよ。

めっちゃ抽象的なお願い。

「えーと…そう言われても…。…自分、別に、特別繊細な魔力の使い方はしてないつもりなんだけど…」

どう説明すりゃ良いんだ?

俺の魔力の使い方なんて、大体「何となく」だぞ。

コツなんてないし、言葉で教えられるようなことでもない。

それなのに。

「私はルイーシュ様に、空間魔法を教わりたいです」

エリトール君は、ルイーシュにそう頼んでいた。

「…俺に、ですか?」

「はい。空間魔法のプロフェッショナルであるルイーシュ様に、空間魔法について教えていただきたいのです」

「…」

…まぁ、空間魔法はルイーシュの代名詞だからな。

あのシルナ学院長でも、空間魔法に関してはルイーシュの方が遥かに上だ、と認めている。

俺もそう思う。

他のことに関してはともかく、他のことに関してはともかく。

他のことに関してはともかく、空間魔法の腕前だけは、ルイーシュは立派なもんだ。

だから、ルイーシュに空間魔法を教わりたい…その気持ちは分かる。

エリトール君じゃなくても、ルーデュニア聖王国でも、たまにそういう人がいた。

空間魔法をちょっとでも齧った人なら、ルイーシュは憧れの的だ。

これまでも何人か、「空間魔法の使い方を教えてください」とか、「その魔法はどうやって使ってるんですか?」とか聞かれたり。

指南を求められたことも、幾度となくあった。

しかしルイーシュはこれまで、一度も、自分の弟子を取ったことはない。

…それどころか。

「…勘です」

と、ルイーシュは答えた。

空間魔法の教えを請われた時は、いつもこの返答である。

「えっ?か、かん?」

「そう、勘です」

「…」

勘で魔法を使う男、ルイーシュ。

これには、エリトール君もぽかん。

…そりゃ、そんな反応にもなるよなぁ。

「適当ですよ、そんなもの。何となく、ただ勘で杖を振るだけです」

「てっ、てきと…!い、いえ、そんなはずは…」

…そう思うだろ?

でもな、ルイーシュに関しては…マジで。

こいつ、いつも適当に杖を振ってるに過ぎないんだよ。

イーニシュフェルト魔導学院に在学中の頃は、学院長も困っていた。

ルイーシュがあまりにも…雑に空間魔法を習得してるから。

特に何も教えてないはずなのに、勘だけで、あれほど繊細な空間魔法を会得してるんだから。

…まぁ、アレだ。天賦の才って奴なんだろうな。

そして天才というのは、大抵、無自覚にその実力を発揮しているものなので。

それを他人に教えることは、非常に難しいのである。
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