神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
途端に、周囲に大量の光が満ちて。

「っ…!」

俺は、思わず目を閉じた。

そして、次に目を開けた時…。

「…えっ…!?」

気がつくと俺は、先程までいた、キルディリア魔王国の港町ではなく。

広々とした、紫の水晶が散りばめられた、きらびやかな部屋に移動していた。

何だこれ。ワープ?瞬間移動?

俺がやったことじゃない。間違いなく、これはクロティルダの…。

…しかし、俺が本当に驚いたのは、自分が瞬間移動したことではなく。

「…ふぇ?」

「っ…!おまっ…!べっ…」

豪奢な部屋の真ん中。薄紫のカバーがかけられたソファに腰掛けて。

間抜けな顔で、いちご味のパピッコを口に咥え、ちゅーちゅーと吸っている…。

…ベリクリーデが、そこにいたことである。

ぷはっ、とパピッコから口を離したベリクリーデ。

俺の顔を見るなり、途端に満面の笑顔になった。

「わー。ジュリスだ」

突然目の前に、2人の男が瞬間移動移動してきたというのに。

「わー」の一言だけで済ませられる、ベリクリーデの肝の太さよ。

もっと驚けよ。

瞬間移動した当の俺さえ、驚いているというのに。

「ジュリスー」

「お、おぉ…」

ベリクリーデは、パピッコ片手に立ち上がり。

とてて、とこちらに寄ってきて、ぱふん、と抱きついてきた。

ちょ、おいおい。

「ジュリス…。…会いたかった」

「ベリクリーデ…」

「会いたかったよ〜…」

ぐりぐり、と頭のてっぺんを、俺の胸に擦り付けてくる。

…分かったから。やめなさいって。

この甘ちゃんっぷり。…間違いない。

「お前…ベリクリーデなんだな?本物だな?」

「うん。本物のベリクリーデだよ。…ジュリスは本物?夢じゃない?」

「夢じゃない。本物だよ」

「本当に?ジュリスに会いたかったから、夢でジュリスに会ってるのかも…」

とか言いながら、ベリクリーデは自分の頬を、むぎゅっ、と抓った。

おいおい。

「ふぇっ」

予想以上に痛かったらしい。

ちゃんと手加減しろよ。…アホの子かな?

「…痛かった…」

「この馬鹿ちんは…」

「…ってことは、夢じゃないんだ。ちゃんと本物のジュリスなんだね」

「本物だよ…。さっきから言ってるだろ」

「そっか…。…そっか」

何度も頷いて、えへへ、と微笑むベリクリーデ。

…良かった。

どうやら、怪我をしている様子はなさそうだ。

こんな…豪奢な部屋に入れられているところを見るに。

さながら囚人のごとく、手荒な真似はされなかったということだろう。

これでもし、ベリクリーデが拷問を受け、傷まみれで牢屋の中に閉じ込められていたら。

今頃、この城、半壊どころか全壊させてたぞ。
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