神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
早く正気に戻らないと、イレースの鉄拳制裁が下るぞ。

「…シルナ、大丈夫か?」

「えっ?え…。えぇーっ!?」

シルナはびくっとして、でかい声を張り上げた。

「キュレム君とルイーシュ君、無事だったんだね。良かった…!…でも、『アメノミコト』がキルディリア魔王国に…!それに、ナツキ様が生きてたってほんと!?」

あわあわあわ、と狼狽えるシルナ。

脳内で、新情報をあれこれ整理してるんだろうな。

「そ、そうなんだ。そっかー…。…とりあえず、キュレム君とルイーシュ君が無事に戻ってきてくれて良かった!」

そうだな。

何はともあれ、それが一番の朗報だ。

「それに…ナツキ様が生きていたことも、喜ぶべきだよね」

「そうだな」

「良かった…。フユリ様もホッとしてるだろうな」

そうだな…フユリ様も、きっと胸を撫で下ろしているだろう。

死んだとされていた兄が、本当は生きていることが分かったのだから。

キュレムとルイーシュの情報なのだから、真偽を疑う必要もない。

とはいえ、ナツキ様の身柄は未だに、キルディリア魔王国にあるのだ。

いつどうなるか分からない、という点では、まだ完全に安心は出来ない。

それに、もう一つ心配なのは。

「でも…そうか。『アメノミコト』が…。彼らが、キルディリア魔王国に…」

…これだよな。

聞くだけで気が重い。

「キュレムとルイーシュ曰く、すぐりと同じ糸魔法を使う暗殺者がファニレス王宮にいたそうだ」

「…」

すぐりは無言で、険しい顔をしていた。

すぐりと同じ糸魔法…。

「…そう。じゃあ、恐らくファニレス王宮にいたのは…」

俺達にとっても因縁の深い、あの人物、

…すると、その時。

「…誰か来た」

「え?」

不意にマシュリが、窓の外を見ながら言った。

ケルベロスの嗅覚で、いち早く来訪者の存在を察知したらしい。

「どうした、マシュリ…」

「珍しいお客さんだよ」

珍しい…お客さん?

「誰なんだ?」

「ルーデュニア聖王国の女王。…フユリ様だよ」

「えっ」

その、意外な来訪者の名前を聞いて。

再び、シルナは硬直してしまった。
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