神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
…さて、前置きはこのくらいにして。

「…皆さん。作戦…と言うか、今後の方針を、僕なりに考えてみたんですが」

そろそろ、本題に入るとしよう。

残念ながら、僕達に残された猶予は、それほど長くないでしょうからね。

キルディリア魔王国軍の本隊が、アーリヤット皇国領に到着したら…そこから、本格的な戦闘が始まる。

その前に、我々も準備を万全に整えておかなければ。

あ、そうだ。その前に一応、

「これから皆さんに、偉そうに指図することになると思うんですけど、その点については…」

堪えてくださいね、と言わざるを得ない訳ですが。

しかし、学院長はすぐに、頭を振って。

「大丈夫だよ。今回の指揮官はナジュ君。君だから」

「そうだ。遠慮なく、俺に出来ることなら何でも言ってくれ」

羽久さんまで。

それに、イレースさんまでもが。

「精々、馬車馬のようにこき使いなさい。…戦争が終わって学院に戻ってきたら、その時は私が、あなたを馬車馬のように酷使するとしましょう」

…とのこと。

いやはや。その時が楽しみで仕方ありませんね。

じゃあ、遠慮なく。

「分かりました。それでは今回の作戦の概要について説明します」

「うん、お願い」

「まずイレースさん。あなたを馬車馬のようにこき使うのは、また次の機会になりそうです」

「…どういう意味です」

それはですね、つまり。

「あなたはイーニシュフェルト魔導学院に待機していてください。聖魔騎士団と協力して、学院の留守をお願いします」

「…」

イレースさんは不機嫌そうに腕組みして、眉間にしわを寄せていた。

うわぁ。美人が台無しですよ。そんな顔してたら。

イレースさんの心の中を覗くと、イレースさんはてっきり、自分も戦場に連れて行かれるものだと思っていたようだが。

でも、今回はそれはナシです。

残念でしたね。

…残念、ではないかもしれませんが。

「私では役不足だと?」

「いえ、そういう訳では」

あなたが役不足なら、この場にいる者は大半、僕も含めて役不足ですよ。

「それとも何です。男女差別のつもりですか?戦場に女は連れていけないと?そんな時代錯誤な男尊女卑思想を持っているなら、今ここで、女の強さというものを教えてあげましょうか?」

イレースさんは、スッと片手に杖を持ち、脅すようにそう言った。

ちょっと。殺気を放つのやめてもらえませんか。

今のイレースさん、「電気ショックを与えれば、差別思想もなくなるだろう」って、本気で思ってますからね。

怖い怖い。

「差別思想なんて持ってませんよ。そういう意味ではありません」

女性は強いですよ。それは知ってます。

僕の大好きなリリスも、超強いですからね。

それに、僕の故郷の戦場では。

最初こそ、徴兵されるのは男性だけだったが…。戦争が長引くと、最早男女の区別など関係なく、等しく兵隊として徴発されていた。

戦場では、男女の区別とか関係ないんですよ。

それに、イレースさんの実力は、僕もよく知ってますからね。

それを疑ったことはありません。一度も。

「なら、どういう意味です」

「後顧の憂いを断つ為です。我々が不在の間に、イシュメル女王が再び、イーニシュフェルト魔導学院に手を出してこないとも限らない」

あの狡猾な女王様のこと。

そのくらい、平気でやりそうじゃないですか?
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