神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
そりゃ、確かに、毒をもって毒を制すのは、戦争の基本だ。

だけど…過剰な虐殺は、俺達の望むところではないはずだ。

それに、無闇だって…。戦争経験者とはいえ、人を殺すことは、

「勘違いしているようですね、ジュリスさん」

「え?」

俺の心を読んだナジュが、にやりと笑った。

「あなたの思ってるのとは違いますよ。僕の考案した『炙り出し作戦』は」

「ど…どういうことだよ?」

すると、そこに。

「はー。力加減って疲れるねー」

「お前は何もしてないだろう。力加減をしているのは俺だ」
 
「あ、ひどーい。こう見えて、不器用な無闇君の為に、私も結構フォローしてるんだよ?」

噂をすれば、何とやら。

テントの中に、無闇と…そして、『死火』の化身である月読が入ってきた。

おぉ、お前ら。

怪我はなさそうで、何よりだ。

「ジュリス、ベリクリーデ…。戻ってたのか」

「あぁ…。今、丁度お前達の話をしてたところだ」

「俺の…?何を?」

「なんか、ナジュの考えた作戦に従ってるってことだが…」

炙り出し作戦…だって?物騒な名前の…。

「あぁ。そうだ」

「…何をやってるんだ?」

まさか、『死火』で容赦なく燃やし殺、

「…見てもらった方が早いだろうな。これだ」

そう言って。

無闇は、ベリクリーデの片腕に、黒い炎をボッ、と点火した。

!?

「…ほぇー?」

燃え盛る自分の手を見ながら、こてん、と首を傾げるベリクリーデ。

「ちょ、おまっ…!何を、」

「落ち着け、ジュリス」

落ち着いていられるか。

俺は急いで、ベリクリーデを助けようとしたが。

「ジュリス、これ、ふわふわするよ」

「は?」

自分の手を燃やされているというのに。

ベリクリーデは、むしろ嬉しそうな顔で、ちょいちょい、と俺の服の袖を引っ張った。

ふ…ふわふわ?

「ベリクリーデ…。…熱くないのか?」

「うん、熱くないよ。ちょっと温かいかな。カイロみたいに、ほんわかする」

ほ、ほんわか?

「ほら、触ってみて」

ベリクリーデが、燃え盛る自分の手を差し出してきた。

俺は、恐る恐る、その黒い炎に手を翳した。

皮膚を焦がす強烈な痛みが突き刺さ…ってくるようなことはなく。

…むしろ。

「…本当だ。ほんわかしてる…」

「でしょ?」

めらめらと燃える炎のはずなのに、全然熱くない。

だけどまったく熱くない訳じゃなくて、例えるなら、そう…。

真冬にストーブつけて、その前に手を翳すと。

じわ〜…っとした、心地良い暖かさを感じるだろう?

アレだよ。

熱いじゃなくて、暖かいと言うのが正しいな。

無闇の…『死火』の炎って、こんなに暖かかったのか?

無闇がスッと手を翳すと、ベリクリーデの腕を燃やしていた(?)黒い炎は、煙みたいに消えてしまった。

…まるで手品だな。
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