神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
…危ないところだった。

「『八千歳』…」

「…」

振り向くと、『八千歳』はかつてないほどに険しい顔をして。

僕ではなく、『玉響』を睨むように見つめていた。

…やっぱり、『八千歳』も気づいてるんだ。

僕が感じているのと、同じ違和感を。

さっきから、あまりにも…『玉響』の攻撃は、ピンポイントに僕達の隙をついてくる。

読みが上手いとか、癖を把握しているとか、そういう次元じゃない。

まるで…天に高くそびえる壁を、ピッケル一本で登ろうとしているような。

人間じゃない…僕達じゃ絶対に敵わないような、バケモノを相手にしているような。

心の中を…見えない何かに見透かされている、ような。

暖簾に腕押し、糠に釘、豆腐に鎹(かすがい)、馬の耳に念仏。

絶対に勝てる気がしない。そんな感覚。

…そうだ、僕が信用出来ないのは、『八千歳』じゃない。

…自分自身が、信じられないのだ。

「…!まさか、君は…」

「…気づきましたか。でも、もう遅いです」

『玉響』は、空間を埋め尽くさんばかりの、大量の糸を射出した。

避けられるか。これは…!

「『八千歳』!逃げ…、」

「馬鹿っ。君が…!」

お互いに、お互いだけは庇おうと。

身を挺して、前に出ようとした…、


…その時だった。


ドゴォォッ!と、派手な音がして、床に巨大な穴が空き。

床を破壊して、大胆に現れたのは。

「ごみぇん。おまひゃひぇ(ごめん、お待たせ)」

神竜バハムートの姿に『変化』し、ナツキ皇王を口に咥えた、マシュリ・カティア…その人であった。
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