神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
あぁ、マシュリ。良かった。

無事だったんだね。

無事に…ナツキ皇王も見つけられたらしい。

あまりに派手な登場で、半ば意識を失いかけてるけど。

それは些事なことだよ。

「もくひぇきははらひた(目的は果たした)。はやくひゃえろう(早く帰ろう)」

さっきから、マシュリの喋り方がふがふがなのは、ナツキ皇王を口に咥えているからである。

…ともあれ。

今の僕達にとっては、渡りに船…ならぬ、

渡りに竜、と言ったところだろうか。

何にせよ…今日のところは、敗北を認めない訳にはいかなかった。

僕達は、思い違いをしていた。

この『玉響』は…もう、僕達の知っている『玉響』ではない。

いや、この人は、最初から偽物なんだけど。

偽物どころか…最早、完全なる別人だ。 

そのことが、よく分かった。 

決着をつけたかったが…。…仕方ない。

マシュリとナツキ皇王を、待たせるのもなんだし。

「…『八千歳』」

「…うん、分かってる」

『八千歳』は、苦々しい表情で頷いた。

僕よりもずっと、『八千歳』の方が、この『偽玉響』と決着をつけたかっただろうに。

だけど、今が引き際だと、『八千歳』にも分かっていた。

時間切れだ。

さっさと決着をつけられなかった、僕達の怠惰が責任だ。

僕と『八千歳』は、素早く神竜バハムート形態のマシュリの背中に飛び乗った。

マシュリタクシー、略してマシュタクに乗車。

初乗り500円…どころか。

何処まで乗っても、往復ちゅちゅ〜る1本の、超良心的価格だよ。

まぁ、その分、乗り心地はイマイチだけどね。

「行って、マシュリ。アーリヤット皇国に」

「ふん。わらっは(うん、分かった)」

マシュリは、ナツキ皇王を口に咥えたまま、神竜バハムートの翼を大きく羽ばたかせ。

王宮の壁に、派手に穴を開け、そこから空中に飛び立った。

「っ、逃がすと思って…!」

『玉響』は、すかさず糸を射出したが。

「させないよ」

その糸を、『八千歳』がすべて薙ぎ払った。

さすが。

その隙に、マシュリはどんどん飛翔していく。

みるみるうちに、その高度は、『玉響』の糸魔法の射程範囲を突破した。

…ここまで来れば一安心、かな。





…この時僕は、既に空の上にいたから、聞こえていないが。

「まだ…!」

地上にいる『玉響』は、再度糸を射出しようとしていた。

…しかし。

「うっ…ぐ…!」

『玉響』は、糸を飛ばすことが出来なかった。

激しい頭痛に襲われた彼は、思わず、その場に膝をついた。

「…『使い過ぎ』ましたか…。まだ…この身体では…」

彼はそれ以上、追撃するのをやめ。

頭痛が治まるのを待ってから、憎々しげに、僕達の飛び去った空を見上げた。

「…良いでしょう。今回は…見逃してあげます」







「…でも、次に会った時は…その時こそ、最後です」




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