神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
そこは、さびれた3階建てのオフィスビルだった。

カラオケルーム○○、って看板が立ってるから、多分、2階と3階はカラオケの店舗が入ってるんだろう。

1階は、どうやらレストラン・バーのようだ。

そのオフィスビルを取り囲むように、3人のキルディリア魔導師がメガホンを持って叫んでいた。

「そこにいるのは分かってるんだぞ!」

「いい加減、観念しろ!出てこい!」

…なんか、穏やかな雰囲気じゃないな。

すると。

「うるさい!キルディリア人は出ていけ!」

ビルの3階の窓が開き、中にいたアーリヤット人が叫んだ。

…叫ぶどころか。

キルディリア魔導師達を攻撃しようと、窓からモノを投げてきた。

カラオケ用のマイクやら、タンバリンやら、果ては客が置いていったゴミのようなものまで。

手当たり次第、建物の中にあるものを引っ掴んではぶん投げているのだろう。

とりあえず、マイクを投げるのはやめろ。

カラオケルームのマイクって、意外と頑丈な作りになってるだろ。あれは当たったら、痛いじゃ済まんぞ。

「ほら、ジュリス。ここ」

ベリクリーデが、絶賛揉めに揉めている、カラオケルームのオフィスビルを指差した。

「あぁ…」

見たところ…どうやら、ここでも小規模なデモ活動が行われているようだな。

ベリクリーデが言ってたのは、このことだったのか。

立てこもるにしても、もっと良い場所あっただろ。…何故カラオケルーム?

とりあえず、立てこもれるビルがあれば何処でも良い、って考えだったのだろうか。

…知らんけど。

このオフィスビルは、ビルと言えども3階建てで、制圧するのはそれほど難しくないだろう。

だが問題は、あのカラオケルームの中に、巻き込まれただけの一般客が取り残されてるんじゃないか、という点だ。

無関係の一般客が人質にされているなら、不用意に突撃することは出来ない。

それもあって、キルディリア魔導師達も、迂闊に手が出せないのだろう。

中の様子がどうなっているのか、確認しないことには、制圧しようにも出来ない。

「早く、そこから出てこい!」

「そんなことをしても無駄だぞ!」

キルディリア魔導師達は、次々に、ビルに向かってそう叫んだ。

しかし。

「黙れ!出ていくのはお前達だ!」

「そうだ、そうだ!この国は俺達の国だ。余所者は出ていけ!」

立てこもりアーリヤット人も、負けてはいない。

窓から外に向かって、次々に叫ぶ。

うーん…。不毛な争いしてんな。
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