神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
「あのな、お前らは子供なんだぞ。子供にスパイなんかさせる訳にはいかないだろ」

俺は、至極真っ当なことを言ったはずなのだが。

「なんで?『アメノミコト』は、子供に暗殺者させてたよ?」

そうだった。

こいつらの古巣は『アメノミコト』…暗殺者組織だったんだった。

「そ、それは…。とにかく、お前達には任せられない」

「だから、それはなんでなの?ちゃんと納得の行く説明をして」

「そーだよ。大人ってこれだから嫌なんだよねー。自分で説明出来ないことを、『子供には分からない』とか言って難癖つけちゃってさ。自分だって分かってないじゃん」

「うぐっ…」

大人の痛いところを的確に突いてくる。

お前達は…本当にやりにくい子供だよ。

すると。

口ごもる情けない大人の俺に代わって。

「ならば、私が説明してあげましょう」

助け舟を出してくれたのは、まさかのイレースだった。

「あなた達は生徒です。生徒には授業があります。生徒は授業を受けなければなりません。理由は以上です」

素晴らしい。さすがイレースだ。

もっと言ってやってくれ。

「そもそも、あなた達は先日、勝手にジャマ王国に帰ってしまって、その間の補習授業もまだ行っていないんです」

「あー…。そーいえばそんなこともあったねー」

忘れてたのかよ、すぐり。

「これ以上、授業を遅れさせる訳にはいきません」

「でも、今は世界の危機なんでしょ?ルーデュニア聖王国にも危険が及ぶかもしれないんでしょ?授業がどうとか、言ってられる状況なの?」

「当たり前です。世界が大戦争を起こそうが、滅亡の危機を迎えようが世界の勝手ですが、授業が遅れれば、それは学院の責任になってしまいますから。責任は果たします」

聞いたか?今の。

イレースの中では、「世界≪授業」なんだな。

教師の鑑だよ。

「そもそも、すぐりさんはともかく、令月さんはキルディリア魔王国に潜入するのは難しいのでは?」

ナジュが、令月にそう指摘した。

「どうして?」

「あなた、超偏った力魔法しか使えないじゃないですか。上級魔導師に認定されるかどうかさえ、怪しいんじゃないかと思いますけど」

「…」

…言われてみれば。

「すぐりさんにしても、糸魔法とか毒魔法とか…。結構ニッチな魔法ですからね。魔導師大国のキルディリアで、そういった魔法がどう判断されるか…」

「あー…。…それはまー…」

「まぁ、読心魔法使いの僕が言って良いことじゃないかもしれませんが」

いや、良いよ。

この際、令月とすぐりを止める口実に鳴るなら、何でも言ってくれ。

「…ごめん、『八千歳』。僕が力魔法しか使えないばかりに…」

「まったくだよ、もー。しょーがないなぁ。じゃあ今回は、大人達に活躍を譲ってあげるとしようかな」

そうだ。そうしてくれ。

お前達は学院に残って授業を受けるなり、園芸部の畑で農業をするなり、どっちかにしてくれ。

世界のいざこざは、俺達大人が引き受けるから。
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