神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
行ってくれるか。大丈夫か?

「ただし、俺、そこの元暗殺者組と違って、スパイ適性なんてまったくないですよ?あまり期待しないでくださいね」

「…良いんじゃないか?スパイらしくない方が、逆に疑われないと思うぞ」

キュレムとルイーシュくらい、裏表のない砕けた性格の方が。

むしろ、イシュメル女王の意表を突けるのでは?

この二人なら、魔導師としてもまったく問題ない。

キュレムはルーデュニア聖王国でも右に出る者のいない、優秀なマギアシューターだし。

ルイーシュの得意な空間魔法は、キルディリアの魔導師にもまったく引けを取らないだろう。 

二人共、間違いなく上級魔導師に任命されるはずだ。

「キュレム君、ルイーシュ君。くれぐれも気を付けてね。君達の安全が、何よりも優先だから」

シルナは真剣な表情で、キュレムとルイーシュに告げた。

「もし万が一、イシュメル女王に咎められることになったら、『シルナに命じられただけだ』って言って。寝返るように言われたら、その時は遠慮なく寝返って構わないから」

「そうです、キュレムさん。ルイーシュさん。聖魔騎士団の情報を渡しても構いませんから、お二人の命を優先してください」

シルナだけでなく、シュニィもそう言った。

「あぁ、そうだね。じゃあその時は、遠慮なくそうさせてもらうよ」

「命あっての物種、ですしね」

キュレムとルイーシュは、軽い口調でそう答えたが。

…二人共、もし何かあっても、決してルーデュニア聖王国を裏切ったり。

ましてや、シルナや、聖魔騎士団の面々を売ってまで、自分の命を助けようとはしないだろう。

本当に「万が一」の時が来たら、自分達の命だけで、事を収めようとする。

そういう奴らだ。

俺達に義理立てしなくても良いのに。

「…何の成果も得られなくても良い。だから…必ず、無事に帰ってこい。聖魔騎士団には…俺達には、お前達が必要なんだからな」

俺も、二人にそう言った。

「ま、ぼちぼち頑張るよ。そんな心配するな」

「そうですよ。ちゃんと頑張ります。…キュレムさん『が』」

「おい。そこは嘘でも、自分も頑張ると言えよ」

…えーっと。

まぁ、スパイならこのくらいの余裕があった方が、むしろ安心して任せられるってことで。
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