神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
ちなみに、カレー味噌バターチーズラーメンは、そこそこ美味しかった。

…え?結局それって何味なのか、って?

カレー味でもあり、味噌味でもあり、バター風味もあり、チーズの風味もあった。

百聞は一見に如かず、一見は一食に如かずだから、まぁ見つけたら食べてみてくれ。

で、それは良かったのだけど。

食べ終わった後、俺は激しく後悔することになる。





「あはぁぁぁ〜…」

「…何だか凄い声出てますけど。大丈夫ですか?」

「…大丈夫じゃねぇよ…」

これが大丈夫なように見えるかよ。

絶賛大不調だわ。

…船酔いで。

「めっちゃ目が回る…。足元がふらつく…。気持ち悪っ…」

「揺れるとは聞いてましたけど、本当に凄い揺れですね。超強風の中、観覧車にでも乗ってる気分です」

それな。

風が強い時は、観覧車だって運行休止だろうがよ。

なんでこの船、この揺れの中で、平然と動いてんの?

これでも一応、酔い止めの薬は飲んできたんだぜ。

それでも、この揺れだからな。

話には聞いていたが…。実際に体験すると、自分の想定が甘かったことを実感するよ。

「あぁ…。やっぱりスパイなんて断れば良かった…」

「早速弱音ですか」

「つーか、あんな変な味のカップ麺なんか食べなきゃ良かったぁ…」

「カップ麺に罪はないですけどね」

いや、大罪だよあのカップ麺は。

だって、アレのせいで、船室の中が。

未だに、あのカップ麺の濃厚な匂いが、狭い個室の中に充満している。

どんな匂いかって?

カレーの匂いもするし、味噌の匂いもするし、バターの匂いとチーズの匂いもする。

どれも、割と自己主張の強い、独特な匂いの食材ばかりだ。

それらの匂いと、カップ麺特有の、あの添加物たっぷりな匂いと、油っぽい麺の匂いがミックスされて…。

…うぉえ。

「無理…。気持ち悪い…」

「どうぞ、エチケット袋を」

「ども…」

ルイーシュが、手術中にメスを差し出す助手みたいに、横からスッとエチケット袋を手渡した。

船室の中には、エチケット袋はダース単位で積んであった。

酷い船酔いは想定内、と言ったところか。

うぇオロロロロ。

「見せられないよ!状態になってますね…」

「はぁ、はぁ…。呑気に見物してんじゃねぇぞ…」

俺だってしんどいんだからな。この野郎。

さっき食べたばっかのカップ麺、全部エチケット袋の中に。

あぁ、勿体ない。

それでも、胃の中のものを全部吐き出すと、少しはスッキリした。

はぁ…死ぬかと思った。

「大丈夫ですか、キュレムさん。生クリームでも飲みます?」

「飲む訳ねーだろ、気持ち悪いこと言うんじゃねぇよ」

また吐き気を催すだろうが。やめろ。

「…つーか、ルイーシュ。お前は大丈夫なのかよ?」

「はい?」

「船酔い」

お前もエチケット袋、要る?

「確かに気持ち悪いですけど、今のところは大丈夫です」

「マジかよ…。アホは風邪引かないって言うが、船酔いにも適応されるんだな」

「ちょっと。酷くないですか?」

おぉ、悪い悪い。つい本音が。
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