神殺しのクロノスタシス7〜後編〜
…って。

優雅にお茶を飲んでる場合か?

「…ルイーシュ!こんなのんびりして良いのか?」

「へ?駄目なんですか?」

え?いや…。

駄目って言うか…。…駄目だろ。

「運良く、ファニレス王宮に潜り込めたんだぞ?スパイとして、もっと…」

イシュメル女王が不在のうちに、怪しまれないよう探りを入れるべきだろ。

今後の作戦?方針?も立てなきゃいけないし。

自分、アレだから。「明日から本気出す」って言って、マジで本気出すタイプだから。

断じて、お茶なんか飲みながらゆったりしてる場合ではない。

「まずは王宮内をさが、」

「おはようございます。キュレム様、ルイーシュ様」

「はぁぁぁ!?」

突然、部屋の呼び鈴を鳴らされて。

俺はビクッとして、悲鳴のような声をあげてしまった。

片手に持っていたティーカップがさざ波をたて、俺の手にビチャッ、と跳ねた。

「あっつ!」

ちょ、パイナップルティーが。手の甲に。

「…あの、大丈夫ですか?」

「はっ…!」

俺を心配して、そっと顔を覗かせたのは。

王宮の使用人らしき、若い女性であった。

「や、え、えぇと…。だ、大丈夫っす…」

「本当ですか?何かお手伝いしましょうか?」

「いや、ほんと大丈夫なんで。お騒がせしました」

ナプキンで手を拭きながら、俺は慌ててそう答えた。

「で、あの…なんすか?」

俺達の会話、もしかして聞いてた?

しかし、そういうことではなく。

「はい。朝食をお持ちしても宜しいでしょうか?」

え、朝食?

「…そういうサービス、あるんですか?」

「勿論です。お食事は、いつでもお好きな時にお持ちします」

あ、そう…。

外に食べに行こうか、それともルームサービスでも頼もうか、ホテルならともかく王宮ってルームサービスあんのかな?とか。

色々考えていたが、向こうの方が上手だった。

「じゃあ…えっと、お願いします」

「畏まりました。すぐにお持ちします」

ぺこり、と一礼するメイドさん。

と、軽く答えたのが間違いだった。

俺は生まれてこの方、ホテルでモーニングなんて食べたことなかった。

俺にとってホテルの朝食は…そう、バイキング形式のアレ。

美味いよな、あれ。ご飯にするかパンにするか迷うヤツ。

「キルディリア魔王国の朝食って、どんな感じなんでしょうね?」

「さぁ…?和食か、洋食か…。どっちでも良いけど」

「お待たせ致しました」

「おっ、来たぞ…。って、えぇっ…!?」

俺は思わず、目を見開いた。

何人ものメイドさんが、学校の給食を運ぶ時に使うみたいな、重い金属製のワゴンを押して。

そこに載せられている洒落た白い陶器のお皿を、次々と、次々と運んできた。

テーブルの上に、整然と並べられていくお皿の数々。

俺は呆然として、他人事のようにそれを見つめているしか出来なかった。
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