イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした
昼休みを少し過ぎたころ。
デスクで簡単な契約書の見直しをしていた美香奈のスマートフォンが、控えめなバイブ音を響かせた。

画面には「女性と子どものための支援センター」の名。

(……早速、来たんだ)

緊張と微かな覚悟を携えながら、美香奈は受話ボタンを押した。

「もしもし、橋口です」

『こんにちは。佐伯です。先日はありがとうございました。』

「こちらこそ、お世話になりました」

『実は、本日相談にいらした方で、法的手続きに関するサポートが必要なケースがありまして。
内容としては、住所移転に伴う住民票の秘匿申請と、離婚に関する確認書類の整備です』

「わかりました。お時間いただければ、整理して対応できます」

自分の声が思ったより落ち着いていることに、少し驚いた。

『ありがたいです。可能であれば、明日午後、センターでお時間いただけますか?』

「はい、大丈夫です。改めて資料を持参して伺います」

『助かります。それでは、明日。お気をつけて』

通話が切れたあと、美香奈はスマートフォンをそっと伏せた。

心臓の音が――少し早い。
けれど、それは怖さよりも、張り詰めた意志の現れだった。

(逃げない。私は、受け取る側から、届ける側になるんだ)

胸の奥が静かに熱を帯びる。

あの日、誰かに手を引かれて救われたから。
今度は自分が、誰かの手を取る。

それは、まだ始まったばかりの
でも確かな“新しいわたし”だった。
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