イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした
初回訪問の帰り道。
美香奈は、支援センターの入口から少し歩いたところで、ふと立ち止まった。

(……ほんの数分話しただけなのに、すごく……濃かった)

佐伯心理士からセンターの運営体制について説明を受け、
対応する相談の種類や、支援内容について概略を知るだけでも、胸が少し苦しくなる感覚があった。

それでも――

「橋口さんには、直接相談に同席いただくことはありません。
ただ、必要に応じて“法的対応が必要な場合”には、センターから個別に依頼を差し上げます。
お仕事のペースは週に一度程度を予定していますので、ご安心ください」

佐伯のその言葉が、いまも心に残っている。

支えるということは、前に出ることではない。
寄り添うということは、同じ痛みを負うことではない。

(……わたしは、私の立場から、誰かを支えていく)

それは、小さな役割。
けれど確かに――かつて自分が欲しかった“安心のルート”を作る仕事だった。

ポケットの中、支援センターから預かった連携用の名刺が静かに揺れる。

「また、来週……」

美香奈は口の中でそっとつぶやき、背筋を正して歩き出した。

新しい一歩は、すでに静かに始まっていた。
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