豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「ねぇ、お姉さん。俺さぁ、童貞だからって振られたんだよ。手も出してくれない男は嫌なんだってさ。年上の経験豊富な男が良いって振られたのにさ、惨めに別れたくないなんて言えるわけ無いだろう。他の女に最愛の人を奪われた貴方なら俺の気持ち分かるよね?」
ゾクゾクっとする危ない雰囲気を突然あらわにした彼に頭の奥で警鐘が鳴る。ただ、彼の放った言葉への驚きの方が勝った。
童貞だから捨てられた!?
まさか、そんな事って。
男女の駆け引きが日常的に行われているBARで働く男が童貞だなんて信じられない。
あまりの驚きに、まじまじと彼の姿を目で追ってしまう。
ありきたりなグレーのスーツに黒の革靴。髪も若者特有の無造作ヘアで前髪が伸びてしまっていて目元がわからない。彼は就活をしていると言っていたから大学生なのだろう。
彼の普段を知らないから判断出来ないが、お世辞にもスマートな男とは言えない。
なんだかスーツに着られている感じかしらね?
どう見ても着なれたスーツという感じではない。営業職の補佐をしている手前、男のスーツ姿は見慣れている。スーツが仕事着のビジネスマンは、身だしなみにも気を遣う人が多い。スーツだけでなく、身につけるネクタイや靴、時計やカフスボタン、小物に至るまでトータルでコーディネートし、小綺麗にまとめている男が多い。しかも、最近では髪型はもちろん、お肌や爪の手入れを欠かさない男までいる。ビジネスマンは第一印象が勝負の世界だからこそ、身だしなみは大事だけど……、隣に座る男を再度見直しても、今時のイケてる男子とも違う。ただ得体の知れない何かが、彼には潜んでいる。そんな気がしてならない。
優しいだけの男ではない何か……
男は顔じゃない! 中身よ中身。
「ただ、まだ若いし恋愛なんてこれからいくらでも出来るじゃない。童貞だって考えようじゃないかしら。女の子からしたら、他の女と比べられる心配もないし」
「ふふ、お姉さん可愛いね」
「えっ!? 何……」
ボソッと呟かれた言葉は、彼の独特の雰囲気にのまれてしまった私には届かない。
「まぁ、いいや。それよりも、一人部屋に帰るのも虚しいし、飲み明かしませんか? 振られた者同士、傷の舐め合いも良いかなって。どうですか? それとも帰りますか?」
妙な雰囲気がフッと消え、長めの前髪から覗く綺麗な瞳が悲しそうに訴えかけてくる。
「お姉さん帰っちゃいますか?」
キュッと握られた手が離さないとでも言うように、わずかに引き寄せられる。
この手を解いて帰るなんて出来そうにない。
捨てられた子犬みたいな不安気な瞳に心を掴まれ、彼の誘いを拒否できない。
コクンと頷く私を見て彼の顔が笑み崩れる。
「良かった。じゃあ、飲みましょ。嫌な事は全部忘れて」
なんて顔して笑うのよ。
熱を持ち始めた頬を隠すように俯いた私の目線の先にカクテルが置かれた。
これって……、スクリュードライバー。
貴方に心を奪われた。ちんけなカクテル言葉。
まさかね。
「これなら口あたりも良いし、悪酔いしないでしょ」
カクテル言葉を知っているだけに深読みしてしまった自分が恥ずかしい。
赤くなった頬を誤魔化すように、差し出されたカクテルに口を付ければ、爽やかな味が口一杯に広がった。
ゾクゾクっとする危ない雰囲気を突然あらわにした彼に頭の奥で警鐘が鳴る。ただ、彼の放った言葉への驚きの方が勝った。
童貞だから捨てられた!?
まさか、そんな事って。
男女の駆け引きが日常的に行われているBARで働く男が童貞だなんて信じられない。
あまりの驚きに、まじまじと彼の姿を目で追ってしまう。
ありきたりなグレーのスーツに黒の革靴。髪も若者特有の無造作ヘアで前髪が伸びてしまっていて目元がわからない。彼は就活をしていると言っていたから大学生なのだろう。
彼の普段を知らないから判断出来ないが、お世辞にもスマートな男とは言えない。
なんだかスーツに着られている感じかしらね?
どう見ても着なれたスーツという感じではない。営業職の補佐をしている手前、男のスーツ姿は見慣れている。スーツが仕事着のビジネスマンは、身だしなみにも気を遣う人が多い。スーツだけでなく、身につけるネクタイや靴、時計やカフスボタン、小物に至るまでトータルでコーディネートし、小綺麗にまとめている男が多い。しかも、最近では髪型はもちろん、お肌や爪の手入れを欠かさない男までいる。ビジネスマンは第一印象が勝負の世界だからこそ、身だしなみは大事だけど……、隣に座る男を再度見直しても、今時のイケてる男子とも違う。ただ得体の知れない何かが、彼には潜んでいる。そんな気がしてならない。
優しいだけの男ではない何か……
男は顔じゃない! 中身よ中身。
「ただ、まだ若いし恋愛なんてこれからいくらでも出来るじゃない。童貞だって考えようじゃないかしら。女の子からしたら、他の女と比べられる心配もないし」
「ふふ、お姉さん可愛いね」
「えっ!? 何……」
ボソッと呟かれた言葉は、彼の独特の雰囲気にのまれてしまった私には届かない。
「まぁ、いいや。それよりも、一人部屋に帰るのも虚しいし、飲み明かしませんか? 振られた者同士、傷の舐め合いも良いかなって。どうですか? それとも帰りますか?」
妙な雰囲気がフッと消え、長めの前髪から覗く綺麗な瞳が悲しそうに訴えかけてくる。
「お姉さん帰っちゃいますか?」
キュッと握られた手が離さないとでも言うように、わずかに引き寄せられる。
この手を解いて帰るなんて出来そうにない。
捨てられた子犬みたいな不安気な瞳に心を掴まれ、彼の誘いを拒否できない。
コクンと頷く私を見て彼の顔が笑み崩れる。
「良かった。じゃあ、飲みましょ。嫌な事は全部忘れて」
なんて顔して笑うのよ。
熱を持ち始めた頬を隠すように俯いた私の目線の先にカクテルが置かれた。
これって……、スクリュードライバー。
貴方に心を奪われた。ちんけなカクテル言葉。
まさかね。
「これなら口あたりも良いし、悪酔いしないでしょ」
カクテル言葉を知っているだけに深読みしてしまった自分が恥ずかしい。
赤くなった頬を誤魔化すように、差し出されたカクテルに口を付ければ、爽やかな味が口一杯に広がった。