豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網

真紘side

 気絶するように眠った鈴香を見下ろし、欲望のまま彼女を貪った自分自身に苦笑をもらす。
 本当に可愛くねぇ……
 彼女を翻弄したようで、実際に翻弄されたのは俺自身だ。最後まで名前すら呼ばれなかった事が、彼女との間に立ちはだかる大きな壁のようで苦々しい想いが心に巣食う。
 鈴香との出会いは偶然だった。
 飲み仲間の悪フザケにノったのがそもそもの始まりだ。自分の顔が異様に女にモテるのは昔から自覚していた。中、高、大学と裏でファンクラブすら出来ていたのも知っていた。
 本気で誰かを好きになった事なんてあったのだろうか。
 好きと言われるたび、彼女達は自分の何処を好きなのだろうと、好意を向けられれば向けられる程、気持ちは冷めていった。
 結局のところ『彼女』以外は、どうでもよかったのだろう。
 吉瀬美沙江《きちせみさえ》、彼女だけが自分にとって特別で唯一だった。
< 26 / 109 >

この作品をシェア

pagetop