豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「俺の周りには、顔でしか俺を見ない女かそんな俺に寄ってくる女目当ての奴等しかいない。旨味ばかりを求めて媚を売る仲間達に、自分を引き立たせるアクセサリーとしか考えない女達。性格が悪かろうが、口が悪かろうが、考え方がクソだろうが奴らにとっては些末《さまつ》な事で、俺の内面を見る奴なんて誰もいない。いつしか表面だけの浅い関係が楽になり、快楽が満たされればその場限りの関係で満足する。表面上の友と一夜限りの遊びに耽《ふけ》る。その方が後腐れなく、楽だと本気で思っていたんだ。鈴香……、貴方に出会うまでは」
『橘真紘』という男は最低な部類のクズ男だと思う。確かに、彼の周りには内面を見て深く付き合おうと考える奴はいないだろう。クラブに入り浸り、クズ仲間と女を漁り、一夜の享楽に耽る。そんな仲間達にとって『橘真紘』の存在は獲物を誘《おび》き出すための餌でしかない。だからこそ、煽《おだ》てて、媚を売り、機嫌を損なわぬよう万全を尽くす。そんな奴等の中に反感を買ってまで、彼に物申す者などいない。まさしく裸の王様だ。それに気づいていながら、そんな奴等と徒党を組み、一時の快楽に耽る。頭の良い彼なら、それがいかに非生産的で無意味な時間か気づかないはずがない。
なら、なぜ彼はそうなってしまったのか?
深い人付き合いを拒否する何かが過去にあったとでも言うのか?
『橘真紘』の精神世界で私の存在は異端分子そのものだ。脅されてなお、刃向かおうとする私は、彼にとって忘れかけていた何かを呼び覚ますきっかけだったのかもしれない。だからこそ執着された。
ただ、もう限界だ。
今さら彼が何を言おうとも、心を改めようとも手遅れだ。心に落とされる彼の言葉は、もう響かない。
「もうやめましょ。貴方が私に執着するのは、思い通りにならないおもちゃを支配したいだけ。ただ、それだけよ。私が貴方に屈服した瞬間、興味を無くすような関係になんの意味もない」
「いや違う! 確かに初めは反抗的な鈴香を屈服させて、俺の存在を認めさせたかった。でも今は違う。何をしていても、誰と一緒にいても考えるのは鈴香の事ばかり。自尊心がどうとか、勝ち負けがどうとか、そんなのどうでもいい!! 会いたい、話したい、時間を共有したい、一緒にいたい、ただそれだけなんだ!!!! 愛しているんだ……」
最後に言われた言葉が耳をすり抜けていく。
もう何も響かない……
「もう無理よ。全てが遅すぎた。何を言われようと私の心には響かない。終わりにしましょ」
強く回されていた腕の力が抜け離れていく。それを寂しいと感じる心に蓋をして言いつのった。
「貴方の愛って何かしらね? 相手を追いつめて、壊してまで手に入れる愛を本当の愛と言えるのかしら? 貴方の愛は独り善がりでしかない。手に入らないおもちゃを欲し、癇癪を起こす子供と一緒よ。愛でもなんでもないわ。もう限界なの。お願い、解放して……」
俯《うつむ》き呟いた言葉はかすれていた。
「離したくない。でも……、もう無理なんだな」
頷いた瞬間、溢れ出した涙がパタパタと床へと落ちていく。
「……わかった」
その言葉を最後に『橘真紘』との恋人契約は終わりを迎えた。
恋人ごっこは終わったのだ。
『橘真紘』という男は最低な部類のクズ男だと思う。確かに、彼の周りには内面を見て深く付き合おうと考える奴はいないだろう。クラブに入り浸り、クズ仲間と女を漁り、一夜の享楽に耽る。そんな仲間達にとって『橘真紘』の存在は獲物を誘《おび》き出すための餌でしかない。だからこそ、煽《おだ》てて、媚を売り、機嫌を損なわぬよう万全を尽くす。そんな奴等の中に反感を買ってまで、彼に物申す者などいない。まさしく裸の王様だ。それに気づいていながら、そんな奴等と徒党を組み、一時の快楽に耽る。頭の良い彼なら、それがいかに非生産的で無意味な時間か気づかないはずがない。
なら、なぜ彼はそうなってしまったのか?
深い人付き合いを拒否する何かが過去にあったとでも言うのか?
『橘真紘』の精神世界で私の存在は異端分子そのものだ。脅されてなお、刃向かおうとする私は、彼にとって忘れかけていた何かを呼び覚ますきっかけだったのかもしれない。だからこそ執着された。
ただ、もう限界だ。
今さら彼が何を言おうとも、心を改めようとも手遅れだ。心に落とされる彼の言葉は、もう響かない。
「もうやめましょ。貴方が私に執着するのは、思い通りにならないおもちゃを支配したいだけ。ただ、それだけよ。私が貴方に屈服した瞬間、興味を無くすような関係になんの意味もない」
「いや違う! 確かに初めは反抗的な鈴香を屈服させて、俺の存在を認めさせたかった。でも今は違う。何をしていても、誰と一緒にいても考えるのは鈴香の事ばかり。自尊心がどうとか、勝ち負けがどうとか、そんなのどうでもいい!! 会いたい、話したい、時間を共有したい、一緒にいたい、ただそれだけなんだ!!!! 愛しているんだ……」
最後に言われた言葉が耳をすり抜けていく。
もう何も響かない……
「もう無理よ。全てが遅すぎた。何を言われようと私の心には響かない。終わりにしましょ」
強く回されていた腕の力が抜け離れていく。それを寂しいと感じる心に蓋をして言いつのった。
「貴方の愛って何かしらね? 相手を追いつめて、壊してまで手に入れる愛を本当の愛と言えるのかしら? 貴方の愛は独り善がりでしかない。手に入らないおもちゃを欲し、癇癪を起こす子供と一緒よ。愛でもなんでもないわ。もう限界なの。お願い、解放して……」
俯《うつむ》き呟いた言葉はかすれていた。
「離したくない。でも……、もう無理なんだな」
頷いた瞬間、溢れ出した涙がパタパタと床へと落ちていく。
「……わかった」
その言葉を最後に『橘真紘』との恋人契約は終わりを迎えた。
恋人ごっこは終わったのだ。