豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「あの二人最近良い感じよね。営業とサポート役ってだけじゃなくて、何か雰囲気が甘いって言うか……。少し前までは、麻里奈ちゃんの一方的な恋心って感じだったけど、橘君も満更でもなさそうじゃない? やっぱりあの噂本当だったのかしらね」
「噂?」
「そう。鈴香と同じように麻里奈ちゃんも橘君のサポート役になってから嫌がらせを受けていたらしいのよ。貴方の時みたいなバカをやらかす女は居なかったけど陰でネチネチとね。麻里奈ちゃんは鈴香と違って普通の女の子でしょ。そんな嫌がらせが続けば参っちゃうじゃない」
「ちょ、ちょっと喧嘩売ってる!? 私もか弱い女ですけど!!」

 かぶせるように叫んだ言葉に、近くの席からの冷たい視線が突き刺さり、慌ててトーンダウンする。

「またまたぁ。鈴香はか弱い女じゃなくて敵を完膚なきまでに叩きのめす女王様じゃない。守られるタイプじゃないない。まぁ、それはさておき、どうやらその嫌がらせをしていた女達を橘君が特定し制裁を加えたらしいの。大した事はしていないと思うけど、陰で嫌がらせするような女は最低だとでも言ったんじゃないかしら。好きな男にそう言われたら絶望的よね。嫌がらせはなくなり、橘君と麻里奈ちゃんの仲が急接近しましたとさって感じね。ほらっ! 見てよ。麻里奈ちゃんの嬉しそうな顔。夕飯にでも誘われたんじゃない」
「……そうかもね。年も近いし、お似合いのカップルよね」
 あんな顔、私には一度も見せなかったのに……
 爽やかな笑顔を振り撒き談笑する橘を見つめ、ドス黒い感情に支配されそうになる。
 私、何考えているんだろう。
 真っ黒に染まる感情を断ち切るように、デスク周りをそそくさと片付け始める。

「定時であがるの? じゃあ、一人者同士、飲みに行きますか?」
「それもそうね」

 了承の返事をしつつ念のためメールを確認するべくスマホを開ける。

「あっ! ごめん無理みたいだわ。課長に呼び出された」
「そっかぁ、残念。じゃあ、また今度ね」

 身支度を終え、手を振り去って行く友の背を見送り画面に目を落とす。

『今夜良ければ飲まないか?』

 こうしてな何かあるたびに気にかけてくれる同期の優しさに笑みがこぼれる。
『了解です』の文字を打ち込みメールを返す鈴香は気づいていなかった。そんな様子をジッと見つめる目があったことに。
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