豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「あぁ、イラつく」
あんな男が未だに鈴香の心に居座っているかと思うと苛立ちが募る。
「う、うぅ、ん……」
むずがる様な声を聞き、彼女を抱いていた腕を緩める。無意識に強く抱き締めていたようだ。
わずかに開いた隙間から鈴香の寝顔を除き見れば、開いた空間を埋めるように擦り寄ってきた。その仕草がまるで甘えん坊の猫のようで愛らしい。熱くなった心のままに彼女を優しく抱き寄せれば、安心したのか規則正しい寝息が聴こえ始めた。
「これからどうすっかなぁ……」
恋愛契約を解消したが、あのままただの先輩と後輩に戻るつもりはなかった。どうにかして、彼女との距離を縮めようと模索していた俺にとって、あの男の暴走は、ある意味嬉しい誤算だ。あんなに早く、しかも一番良い形で彼女との距離を縮められるとは思っていなかった。
今朝のやり取りを思い出し笑いが込み上げてくる。
あれは完全に断るつもりだったよなぁ……
往生際が悪いと言うか、拒否したところで、俺が手放すわけないのに。
確かに強引だったと思う。彼女の恐怖心を煽り、同居を承諾させた自覚はある。一晩経てば、冷静になり承諾した事を後悔するだろうとも想像していた。だからこそ、逃げられないように先手を打った。
『一度交わした約束を直ぐに反故するのは大人としてどうかと思うよ』
俺との年の差を挙げて、何かと子供扱いする鈴香には想像以上に効いた。
鈴香は分かっていない。たかだか七歳の差なんて何の意味もない事を。事実、男女の機微に疎い鈴香は俺に丸め込まれ同居を断ることすら出来なかった。
年上だから何だと言うのだ。俺より人生経験が長かろうと、社会人として先輩だろうと関係ない。男女の関係になれば年の差なんて関係ないと何故分からない。
ドロドロに甘やかして俺なしではいられなくなればいいのに。
いや、誰よりも年の差を気にしているのは俺自身か。
未だに過去に囚われ前に進めない。
『真紘、貴方の事は誰よりも大切よ。愛している気持ちも変わらないわ。でも、もう限界なの……。貴方はまだ子供で、貴方が大人になるのを待てるほど、私は強くない。ママゴトのような恋愛は、もう終わりにしましょう。――だから、サヨナラ』
陳腐な台詞を残し、去って行った美沙江の後ろ姿が目に焼きついて離れない。
知らない男の腕に手を絡めた美沙江の姿が……
腕の中でスヤスヤと心地良い寝息をたて眠る鈴香をかき抱く。突然の強い拘束にイヤイヤと身動ぐ彼女の抵抗を容易く押さえ込み、キスを落とす。
薄っすらと目を開けたが、眠気に勝てなかったのか、直ぐに瞳を閉じてしまった。
鈴香と美沙江は違うと分かっている。あんな無責任な女とは違うと分かっている。
真っ直ぐで、勝ち気で、頑張り屋。誰からも信頼されるほど優秀で頼りになる存在なのに、たまに抜けている。そのアンバランスさも魅力的に写る。
しっかり者の癖に、何故か男女の仲だけは押しに弱く流されやすい。
甘え下手で、意地っ張りな鈴香。
彼女の様々な一面を知る度に好きになっていく。
もう鈴香を知る前の自分には戻れない。
だからこそ怖い。鈴香がこの手から消えてなくなってしまうことが怖い。
「鈴香、愛している……」
「……うぅ…ん、真紘……」
鈴香の甘い声が俺の名を呼ぶ。
そんな些細なことが、冷え切った心を温めてくれるような気がした。
あんな男が未だに鈴香の心に居座っているかと思うと苛立ちが募る。
「う、うぅ、ん……」
むずがる様な声を聞き、彼女を抱いていた腕を緩める。無意識に強く抱き締めていたようだ。
わずかに開いた隙間から鈴香の寝顔を除き見れば、開いた空間を埋めるように擦り寄ってきた。その仕草がまるで甘えん坊の猫のようで愛らしい。熱くなった心のままに彼女を優しく抱き寄せれば、安心したのか規則正しい寝息が聴こえ始めた。
「これからどうすっかなぁ……」
恋愛契約を解消したが、あのままただの先輩と後輩に戻るつもりはなかった。どうにかして、彼女との距離を縮めようと模索していた俺にとって、あの男の暴走は、ある意味嬉しい誤算だ。あんなに早く、しかも一番良い形で彼女との距離を縮められるとは思っていなかった。
今朝のやり取りを思い出し笑いが込み上げてくる。
あれは完全に断るつもりだったよなぁ……
往生際が悪いと言うか、拒否したところで、俺が手放すわけないのに。
確かに強引だったと思う。彼女の恐怖心を煽り、同居を承諾させた自覚はある。一晩経てば、冷静になり承諾した事を後悔するだろうとも想像していた。だからこそ、逃げられないように先手を打った。
『一度交わした約束を直ぐに反故するのは大人としてどうかと思うよ』
俺との年の差を挙げて、何かと子供扱いする鈴香には想像以上に効いた。
鈴香は分かっていない。たかだか七歳の差なんて何の意味もない事を。事実、男女の機微に疎い鈴香は俺に丸め込まれ同居を断ることすら出来なかった。
年上だから何だと言うのだ。俺より人生経験が長かろうと、社会人として先輩だろうと関係ない。男女の関係になれば年の差なんて関係ないと何故分からない。
ドロドロに甘やかして俺なしではいられなくなればいいのに。
いや、誰よりも年の差を気にしているのは俺自身か。
未だに過去に囚われ前に進めない。
『真紘、貴方の事は誰よりも大切よ。愛している気持ちも変わらないわ。でも、もう限界なの……。貴方はまだ子供で、貴方が大人になるのを待てるほど、私は強くない。ママゴトのような恋愛は、もう終わりにしましょう。――だから、サヨナラ』
陳腐な台詞を残し、去って行った美沙江の後ろ姿が目に焼きついて離れない。
知らない男の腕に手を絡めた美沙江の姿が……
腕の中でスヤスヤと心地良い寝息をたて眠る鈴香をかき抱く。突然の強い拘束にイヤイヤと身動ぐ彼女の抵抗を容易く押さえ込み、キスを落とす。
薄っすらと目を開けたが、眠気に勝てなかったのか、直ぐに瞳を閉じてしまった。
鈴香と美沙江は違うと分かっている。あんな無責任な女とは違うと分かっている。
真っ直ぐで、勝ち気で、頑張り屋。誰からも信頼されるほど優秀で頼りになる存在なのに、たまに抜けている。そのアンバランスさも魅力的に写る。
しっかり者の癖に、何故か男女の仲だけは押しに弱く流されやすい。
甘え下手で、意地っ張りな鈴香。
彼女の様々な一面を知る度に好きになっていく。
もう鈴香を知る前の自分には戻れない。
だからこそ怖い。鈴香がこの手から消えてなくなってしまうことが怖い。
「鈴香、愛している……」
「……うぅ…ん、真紘……」
鈴香の甘い声が俺の名を呼ぶ。
そんな些細なことが、冷え切った心を温めてくれるような気がした。