豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「好きだからに決まってるだろ。何で俺の気持ち信じないんだよ。前から言っているよな! 好きだ、愛しているって何度も。だから、抱き締めたいし、キスだってしたい。気まぐれで手を出している訳でも、揶揄っている訳でもない。確かに、俺の言動に振り回された鈴香に信じろって言ったて難しいと思う。ただ、今は本気なんだよ。どうして信じてくれない」
「信じられる訳ないじゃない! 貴方と私は七歳も年が離れているのよ。こんなオバさんに本気になるなんてあり得ない。そんな事、自分だって分かっている。だからこれ以上、私の心を乱すのはやめて。もう期待させないで……」

 口走った言葉に慌てて口を塞ぐ。
 私は何を期待しているの?
 明確な答えが脳裏を過り、それを否定するように頭を振る。
 どうして揶揄われるのが嫌だったの?
 戯れに抱き寄せられ、悪戯に落とされるキスに、心の奥底で喜びを感じていた。
 確かに感じていた愉悦を認めるのが怖かった。このまま自分の気持ちを認めてしまえば、裏切られた時の代償は計り知れない。
 恋愛契約を交わしていた時とは違う。あの時は『脅迫』という免罪符を持っていた。脅されていた、仕方なかった、彼を恨む事で自我を保てていた。橘へと傾きかけた心を律することが出来た。
 それが全て消え去った今、橘への気持ちを認めて仕舞えば、裏切られた時、裸の心を守るものは何もない。橘にのめり込み、雁字搦めに囚われた私は壊れてしまう。だから認めるのが怖い。
 橘に惹かれている心を……

「よし! 分かった。今のまま、話していても鈴香は俺を信じられないようだし、まずはお互い分かり合う所から始めてみよう」
「はっ!? なんで?」
「だって、鈴香は俺の愛が信じられないだろう? だったらお互いに理解する所から始めるしかないじゃん。という訳で、明日デート行こう」
「えっ!? デート??」
「プランは俺任せでお願いします。じゃ、ご飯ご飯。あと作るから座ってて」

 私を膝から下ろすと、背を向け歩き出した橘がキッチンへと消えていく。
 なぜあの言い合いで、デートという流れになるのかさっぱりわからない。
 やっぱり振り回されている感が否めない。
 若い子の考えはサッパリよ……
 ひとつ大きなため息を吐き、近くにあったクッションに顔を埋め、膝を抱えた。
< 70 / 109 >

この作品をシェア

pagetop