豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網
「えっと、コレに乗るの?」
「そう。鈴香乗ったことある?」
「いや、ないけど」
本当に、このアヒルに乗るつもりなのか? 信じられない。若いカップルが乗っているのはよく見るが、間違ってもいい大人が乗るような代物ではない。
「じゃ、乗ろっか」
「はっ!? いやいや……」
がっちり握られた手を彼に引かれ、誘導員のおじさんの生温かい目にさらされ、これ以上の押し問答は強制的に終了となった。
プカプカと浮くアヒルに乗り、ユラユラと揺れる。
「ほらっ! ちゃんと漕がないと前に進まない!」
「てっ言っても。コレ恥かし過ぎでしょ。いい大人が乗るもんじゃないし、周り見ても子連れか若いカップルばっかりじゃない」
池の中でプカプカ浮くアヒルからは、キャッキャ騒ぐ可愛らしいはしゃぎ声が聴こえてくる。数匹浮かぶアヒルの中で、言い合っているのは、私達くらいだろう。
「鈴香は周りの目を気にし過ぎなんだよ。いい大人がって言うけど、大人が子供っぽい遊びして何が悪いのさ? 楽しい時間を過ごせれば周りなんて関係ないじゃん。それこそ周りを気にしていたら楽しめるモノも楽しめなくなる」
「でも……、恥ずかしいじゃない。いいオバさんが、はしゃいでみっともないってバカにされるのがオチよ」
「それが何だって言うのさ。言いたい奴には言わせておけばいい。人を見下す奴の方がよっぽど低レベルだ。そんな奴等を気にして、自分の行動に制限をかけるなんてバカらしい。年齢が何だって言うんだよ。年を重ねても自由に行動し、思いのまま生きている人の方が、殻に閉じこもって周りを見下しているだけで何もしない人よりよっぽど魅力的だ。まぁ、俺が言っても説得力ないか……」
思いのまま生きるかぁ。
年を重ねる度に、出来ない事が増えていく。
いい大人なんだから辞めなさいが増えていった。
コレをやったら恥ずかしい、アレをやったら馬鹿にされる。周りの目が気になり、大人とは何かを考え、大人になろうとした結果、出来ない事が増えていく。
本当の自分は、周りを気にするあまり、前に進めなくなった子供のままで、理想の大人とは程遠い。
いつの間にか降り出した雨が、水面を揺らし、シトシトと降る雨音が周りの音を全て消し去ってくれる。
「そんなに年齢って大切な事かな? 鈴香は、いつも俺との年齢差を言うけど、それって重要なこと? 確かに七歳差は大きいかもしれない。話す話題は違うし、お互いに知らない情報も多い。でもそれって考え方によっては当たり前の事じゃないの。年齢とは関係なく、あかの他人なんだから始めは知らない事だらけだ。それを知っていくのが男女関係の第一歩なんじゃない。お互いの考え方や価値観、生活スタイル、果ては性癖まで知っていく中で、相手の事を理解し、嫌なところも含めて好きになっていく。そこに年齢は関係ないんじゃない」
私は、何故そんなに年齢差を気にしていたのだろう。橘の言う通り、恋をするのに年齢や、相手との年の差なんて関係ないのかもしれない。
年上だからと言って、必ずしも精神年齢が大人とは限らない。私のように……
自分の立場が弱くなると、年上だと言うことを笠に着て、年齢差を理由に彼の意見を一蹴していた。そんな私より橘の方がよっぽどしっかりとした大人な考え方をしている。
ただ、年の差を理由に逃げていただけなのかもしれない。
『こんなオバさん恋愛対象にならない』
『若い子の考えている事はわからない』
『子供なんだから……』
全ては、橘に惹かれ出した心にストップをかけるための言い訳に過ぎない。
「鈴香、恋に落ちるのに年の差なんて関係ない。年齢だとか、後輩だとか、全て取っ払って一人の男として見て欲しい」
キュッと握られた両手が熱くなる。
真剣な眼差しで見つめられ、私の心に彼の言葉がストンと落ちてきた。
一人の男としてかぁ……
いつの間にか雨は止んでいた。雲の合間から差し込む陽の光が水面をキラキラと照らす。まるで、暗雲立ち込める私の心に、差し込む光のように。
「そう。鈴香乗ったことある?」
「いや、ないけど」
本当に、このアヒルに乗るつもりなのか? 信じられない。若いカップルが乗っているのはよく見るが、間違ってもいい大人が乗るような代物ではない。
「じゃ、乗ろっか」
「はっ!? いやいや……」
がっちり握られた手を彼に引かれ、誘導員のおじさんの生温かい目にさらされ、これ以上の押し問答は強制的に終了となった。
プカプカと浮くアヒルに乗り、ユラユラと揺れる。
「ほらっ! ちゃんと漕がないと前に進まない!」
「てっ言っても。コレ恥かし過ぎでしょ。いい大人が乗るもんじゃないし、周り見ても子連れか若いカップルばっかりじゃない」
池の中でプカプカ浮くアヒルからは、キャッキャ騒ぐ可愛らしいはしゃぎ声が聴こえてくる。数匹浮かぶアヒルの中で、言い合っているのは、私達くらいだろう。
「鈴香は周りの目を気にし過ぎなんだよ。いい大人がって言うけど、大人が子供っぽい遊びして何が悪いのさ? 楽しい時間を過ごせれば周りなんて関係ないじゃん。それこそ周りを気にしていたら楽しめるモノも楽しめなくなる」
「でも……、恥ずかしいじゃない。いいオバさんが、はしゃいでみっともないってバカにされるのがオチよ」
「それが何だって言うのさ。言いたい奴には言わせておけばいい。人を見下す奴の方がよっぽど低レベルだ。そんな奴等を気にして、自分の行動に制限をかけるなんてバカらしい。年齢が何だって言うんだよ。年を重ねても自由に行動し、思いのまま生きている人の方が、殻に閉じこもって周りを見下しているだけで何もしない人よりよっぽど魅力的だ。まぁ、俺が言っても説得力ないか……」
思いのまま生きるかぁ。
年を重ねる度に、出来ない事が増えていく。
いい大人なんだから辞めなさいが増えていった。
コレをやったら恥ずかしい、アレをやったら馬鹿にされる。周りの目が気になり、大人とは何かを考え、大人になろうとした結果、出来ない事が増えていく。
本当の自分は、周りを気にするあまり、前に進めなくなった子供のままで、理想の大人とは程遠い。
いつの間にか降り出した雨が、水面を揺らし、シトシトと降る雨音が周りの音を全て消し去ってくれる。
「そんなに年齢って大切な事かな? 鈴香は、いつも俺との年齢差を言うけど、それって重要なこと? 確かに七歳差は大きいかもしれない。話す話題は違うし、お互いに知らない情報も多い。でもそれって考え方によっては当たり前の事じゃないの。年齢とは関係なく、あかの他人なんだから始めは知らない事だらけだ。それを知っていくのが男女関係の第一歩なんじゃない。お互いの考え方や価値観、生活スタイル、果ては性癖まで知っていく中で、相手の事を理解し、嫌なところも含めて好きになっていく。そこに年齢は関係ないんじゃない」
私は、何故そんなに年齢差を気にしていたのだろう。橘の言う通り、恋をするのに年齢や、相手との年の差なんて関係ないのかもしれない。
年上だからと言って、必ずしも精神年齢が大人とは限らない。私のように……
自分の立場が弱くなると、年上だと言うことを笠に着て、年齢差を理由に彼の意見を一蹴していた。そんな私より橘の方がよっぽどしっかりとした大人な考え方をしている。
ただ、年の差を理由に逃げていただけなのかもしれない。
『こんなオバさん恋愛対象にならない』
『若い子の考えている事はわからない』
『子供なんだから……』
全ては、橘に惹かれ出した心にストップをかけるための言い訳に過ぎない。
「鈴香、恋に落ちるのに年の差なんて関係ない。年齢だとか、後輩だとか、全て取っ払って一人の男として見て欲しい」
キュッと握られた両手が熱くなる。
真剣な眼差しで見つめられ、私の心に彼の言葉がストンと落ちてきた。
一人の男としてかぁ……
いつの間にか雨は止んでいた。雲の合間から差し込む陽の光が水面をキラキラと照らす。まるで、暗雲立ち込める私の心に、差し込む光のように。