大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
「木崎さんも休憩?」
「はい、二十分だけですが」

 美空たちの業務は、その性質上長時間の休憩を取ることができない。担当者は、離陸や着陸のラッシュが途切れる隙間を縫って交代で休憩する。
 細切れの時間になるため外で休憩するのは難しく、社員の大半は本社ビル内の休憩室で過ごす。隣の仮眠室で仮眠を取る同僚も多い。
 しかしパイロットがこの部屋にいるのは珍しかった。彼らには専用の休憩室があるためだ。
 美空はつかのま休憩室を出ていこうかと迷った末、朋也の隣に腰を下ろした。
 ジャケットの分だけスペースが空いているのを確認して、ペットボトルの蓋を開ける。
 警戒心をむき出しにするのも、朋也を意識しているみたいで嫌だ。しかしそう思う時点ですでに意識しているのだという自覚はなかった。

「ふつうに来る機会があるのはたしかだけど、木崎さんに会えないかとも思ってた」

 危うく口をつけたばかりのゆずレモンソーダに咽せそうになり、美空は咳きこんだ。「大丈夫?」と尋ねられ、手振りで大丈夫だと伝える。

「なんで……」
「なんでって。この前のお礼がまだだったよね」
「お気遣いなく。落とし物を拾っただけですよ。それだって、急いで渡すほどのものでもなかったですし」
「急いでくれたんだ。この前は、俺のことをまるで人でなしを見る目で見ていたのにね」

 初対面での件を指していると気づくなり、美空は頬を紅潮させた。

「あれは、そもそもあなたがわたしのことを勘違いしたからです……! それに、急いだのはあなたのためではなくて、お客様のためです。パイロットはメンタル管理も大事だといいますし、あなたが動揺して運航に影響があったらいけないと思っただけですから」
「その程度では動揺しないよ。ところでいつなら空いている? 苦手な食材はある?」
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