大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
 それでも、自分が選べなかった道の上で飛び抜けた成果をあげる朋也の姿が、眩しくて苦しい。

「やっぱり、あのひとは地雷……! うん、関わらないのが吉よ」

 美空はスマホを放り、勢いをつけてベッドから下りた。
 返信はしないままだった。


 
 今日は遅番なので、朝十時の出勤だ。
 不規則勤務の数少ない利点は、ラッシュの時間を避けられるところだと思う。朝の時間を余裕を持って過ごせるだけでも気が楽になれた。
 メッセージを既読無視したことに罪悪感がないではなかったが、かといって返信すれば苦しくなるのも自明で、美空は自分の心を守るほうを取った。
 あれから二日、朋也からも追加のメッセージは来ていないから、返信しなくても大したことではなかったようだ。
 朝の混雑時間を過ぎてひと息ついた空気の漂うオペセンに足を踏み入れる。
 いつもの席につくと、隣の瀧上は電話中だった。漏れ聞こえてくる内容からすると、相手は機長のようだ。
 目礼だけして、美空もモニターを確認する。

「――手配します。また連絡するので、確認をお願いします」
「なにかあったんですか?」

 電話を切った瀧上に尋ねると、すぐに指示が飛んできた。

「AP102便で機材トラブルが発生した。ダイバートするぞ」

 AP102便は香港行きだが、香港ではなく別の空港へ代替着陸させるという意味だ。
 理解するなり、美空はAP102便の現在地をモニター上でとらえ、ダイバート先の確認を行う。
 頭がフルスロットルで回転する。よけいなことを考える暇はない。
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