大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
【いいよ】と返したメッセージは既読すらつかずに無視され、電話をすれば留守電に切り替わる。
 連絡をくれとメッセージを残しても、美空からの反応はなかった。
 それでもようやくアプリのメッセージに既読がついたと思ったら【やっぱりすみません】。
 さらに、電源すら切られている。

「着信拒否かよ……」

 朋也は足音も荒く、羽田空港内のエアプラス社オフィスを出る。同僚が珍しいものを見るように朋也を見たが無視をした。
 ただただ、ままならない展開が苛立たしい。
 しかし同時に、普段であれば浮かびかけた苛立ちなどすぐに流してしまえるはずの自分が、それをできないでいることがふしぎでもあった。
 周りからはクールだの取り澄ましているだのと言われがちな朋也だが、それは単に自分の中の優先順位がはっきりしているからである。
 歳の離れたかわいい弟の願いを叶えるべく操縦技術を磨いてきた朋也にとって、それ以外は――特に恋愛事は――邪魔でしかなかったのだ。
 朋也がパイロットだというだけで、色目を使われすり寄られるのも気に入らなかった。

(だからあのとき、彼女に頬を叩かれた気がしたんだよな……)

 美空の言葉が、そのときの彼女の強い目が、なぜか胸の内側に鮮烈に焼きついた。
 相手が誰であっても、おもねらない。
 だが、自分に非があると思えば謝るのをためらわない。
 そういう美空の姿は新鮮で、好ましく思った。
 だから自分でも無意識のうちに、美空との接点を作ろうと躍起になっていた。

(けど、あんなに頑なだとは)

 美空の態度はつれなかった。
 彼女との接点ができたと柄にもなく浮ついた朋也だったが、会うたびに冷や水を浴びせられた。それもまた朋也には経験のないことだった。
 縁談はあっけなく断られる。
 落とし物の礼は、にべもなく受け取り拒否される。
 展望デッキからの眺めが好きなら喜ぶだろうと思って送った写真に対しても、反応はそっけない。食事にしても、乗り気ではなさそうだった。
 ようは、朋也が投げたボールが返ってこない。
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