大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
 よろよろと起きあがりシャワーを浴びたが、髪を乾かすころにはかえって寒気がひどくなってしまった。冷蔵庫を覗いても、ろくなものがない。コンビニに買いにいく気力も湧かない。
 とにかく寝よう、となにげなくバッグに入れっぱなしだったスマホを取り出した美空はぎょっとした。着信履歴が六件も残っている。
 いずれも朋也だった。

(あ……そういえば返信してなかった……)

 しかしかけ返す元気もなければ、電話したところで声も出ない状況である。
 会いたいと言ったのは美空だが、いま会ったとしても万が一、朋也に風邪が移っては大変だ。
 もし移ったらと思うだけで肩が強張ってしまう。
 パイロットは風邪薬を飲んで乗務することができない。
 地上職の美空であれば可能なことが、パイロットは禁じられている。なおさら、朋也に接触するするわけにはいかない。
 かろうじてメッセージアプリを開いた美空は、もうろうとしながら返信を打つ。

【やっぱりすみません】

 連絡できるようになったら、またあらためる。そう続けたかったが、もう限界だった。
 スマホを手にしたまま、美空は意識を手放した。


     *


 今日最終のデブリーフィングが終わると同時に朋也は美空に電話したが、今回は留守電話にすら切り替わらなかった。

『おかけになった電話は電源が入っていないか、 電波の届かない場所に――』

 つれないアナウンスを最後まで聞かず、朋也は電話を切る。

(いったい、どういうつもりだ?)

 苛立ちとも焦りともつかないものが湧きあがる。電話をかけたのは、これで何度目だったか。
 美空からのメッセージを受け取って、会えるかとわずかに期待したのもつかのま、それ以降なんの連絡もない。
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