大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
 返ってきたとしても、朋也がミットを構えた場所とは別の方向に投げられてしまう。そのたびに、朋也は受け止めようとしてあちこちに走らされるのだ。

(その変則的なボールを追いかけるのが楽しい……なんて思う俺も、どうかしてるけど)

 とはいえ朋也は初めのころこそ余裕ぶっていたが、そんな余裕はもろくも失われていった。
 きっかけは、オペセンのエレベーター前で美空と親しげに話す男を見たことだった。
 その男は、エレベーターの中でも朋也を牽制してきた。
 気づかないわけがない。
 その男――瀧上とは、オペセンのロビーでもすれ違った。会釈した俺に対して、瀧上は敵意をむき出しにしてきたのだ。

『木崎にこれ以上つきまとわないでくれ』

 表面上は受け流したが、朋也の心中は穏やかでいられなかった。
 きわめつけが美空自身から突きつけられた、連絡するなというひと言。
 自分でも驚くほど動揺した。美空にはすでに瀧上がいるのかと思うと、手に負えないほど尖った感情も心の内で暴れた。
 しかし恋人がいるなら、踏みこまずに引き返すのが賢いやりかただろう。あのとき朋也は意思の力を総動員させて、自分をそう納得させたのだ。
 ――にもかかわらず。
 美空から、直接話したいから時間をくれと言われれば、応じない選択肢などあり得なかった。
 そんなわけで美空に振り回されるがまま、朋也は連絡を取ろうとしたのだが。

「着拒の意味を教えてくれ……」
< 73 / 143 >

この作品をシェア

pagetop