大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが
「お見合い……お見合い!? え、その話をパパは受けたの!?」
「僕に専門学校での仕事を紹介してくれた恩人なんだよ。どうかな、美空……」

 父がすまなそうな顔で、美空の機嫌をうかがう。

「どうかなって言われても、すぐには答えられないよ」
「まさか、恋人がいるのか?」
「まさかって言わないでよ。……いないけど。いないけど!」

 まさか、の台詞を言いたいのは美空のほうだ。

 大事な話だというから、父がとうとう再婚するのかもしれないと思っていた。美空自身の話だとは思いもしなかったのに。

「でも結婚なんて。今は仕事で手一杯で、ほかのことなんて考えられないよ。パイロットだけじゃない、わたしたちだって日々勉強なの。わたしなんて、まだディスパッチャーですらないし……無理だよ」
「けど美空にも、パパがママを見つけたように素敵なパートナーを見つけてほしいんだよ」

 父は愛妻家だった。あんなに好きだったパイロットをあっさり辞めて、母の看病に専念したくらいだ。
 美空だって、素敵な出会いに憧れがないわけではない。
 恋愛にも人並みに興味がある。あたたかな家庭を頭に描くこともある。
 けれどまだ今ではないと思っていた。まだ一人前ですらないのに、遊んでなんかいられない。

(それにパイロットと、だなんて)

 眉が曇りかける。
 美空はその理由から目を逸らし、不服を唱えた。
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