お と な り
どれだけ顔をしかめて頭をひねっても、ぷつりと途切れた記憶の先はたどれず。
「……はー」
一旦降参。
だって困ったことに全然思い出せない。
一杯目のビールジョッキを勢いよくテーブルにたたきつけたことは覚えてるんだけどなぁ。
●
「……わお」
朝起きた時は、たぶん、ひどい顔だった。
あの小憎たらしい隣人も鼻で笑っていたし。
皮脂でヨレヨレの長時間化粧を落としてない崩れ放題の、そりゃあひどい状態で。
これは化粧を落としたあとのお肌の状態がやばそうだ――と。
皮脂でとけたファンデーションを触ってげんなりした――のだけど。
「……うそ」
いざ化粧を落とし、鏡の前に立つと、どうだろう。
予想に反し、肌つやのいい顔を不思議な気持ちで見つめる。
いつもならそんな失態を犯したわたしの、むくみまくりのブス顔(これは紫乃ちゃん談。身も蓋もなくてひどすぎる)なのに。
今日のわたしに限っては、なぜかお肌の調子がよかった。
化粧を落とさず寝たのがお肌の治安がいいのだけど、これはまさかゆうべのあれがよかったから――?
「(……まさかね」
はりのある肌を指で突つきながら、ゆうべのことをなんとなく思い出す。
『おれのせいにしていいよ』
無駄にいい顔と、無駄にいい声で。
なんか、そのようなことを言われた気がする。
そのときの隣人は服を着ていて、それはわたしも同じで。
だけど体はすでに熱かった。
あのときの隣人の湿った瞳が脳裏に浮かぶ。
「――――…」
――ピンポーン。
「……?」
……だれだろう?
なんとなーく、いやな予感。
突然鳴らされたインターホンに、ルームウェアにガウンを羽織って玄関に向かう。
宅配とかならいいけれど、あいにく最近なにか頼んだ覚えはない。
「……」
涼くんだったらどうしよう。
もしも涼くんだとしたら、非常に困る。だってまだ、色々と心の準備ができていない。
「…………」
ドキドキしつつ、そうっと覗き穴を見る。
「……え」
そこにいたのは――
「開けて」
何度瞬きしても、どこからどう見ても――隣人の結城である。