お と な り


どれだけ顔をしかめて頭をひねっても、ぷつりと途切れた記憶の先はたどれず。




「……はー」



一旦降参。



だって困ったことに全然思い出せない。



一杯目のビールジョッキを勢いよくテーブルにたたきつけたことは覚えてるんだけどなぁ。













「……わお」




朝起きた時は、たぶん、ひどい顔だった。


あの小憎たらしい隣人も鼻で笑っていたし。



皮脂でヨレヨレの長時間化粧を落としてない崩れ放題の、そりゃあひどい状態で。



これは化粧を落としたあとのお肌の状態がやばそうだ――と。


皮脂でとけたファンデーションを触ってげんなりした――のだけど。



 「……うそ」



いざ化粧を落とし、鏡の前に立つと、どうだろう。



予想に反し、肌つやのいい顔を不思議な気持ちで見つめる。



いつもならそんな失態を犯したわたしの、むくみまくりのブス顔(これは紫乃ちゃん談。身も蓋もなくてひどすぎる)なのに。



今日のわたしに限っては、なぜかお肌の調子がよかった。



化粧を落とさず寝たのがお肌の治安がいいのだけど、これはまさかゆうべのあれがよかったから――?





「(……まさかね」




はりのある肌を指で突つきながら、ゆうべのことをなんとなく思い出す。





『おれのせいにしていいよ』




無駄にいい顔と、無駄にいい声で。



なんか、そのようなことを言われた気がする。



そのときの隣人は服を着ていて、それはわたしも同じで。



だけど体はすでに熱かった。



あのときの隣人の湿った瞳が脳裏に浮かぶ。




「――――…」




――ピンポーン。




「……?」




……だれだろう?



なんとなーく、いやな予感。




突然鳴らされたインターホンに、ルームウェアにガウンを羽織って玄関に向かう。




宅配とかならいいけれど、あいにく最近なにか頼んだ覚えはない。




「……」




涼くんだったらどうしよう。


もしも涼くんだとしたら、非常に困る。だってまだ、色々と心の準備ができていない。



「…………」



ドキドキしつつ、そうっと覗き穴を見る。



「……え」



そこにいたのは――



「開けて」





何度瞬きしても、どこからどう見ても――隣人の結城である。









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