もう一度 恋をするなら
◇◆◇


「雪ちゃん、おかえり! お疲れ様」

 インターフォンが鳴って、ドアを大きく開けると仕事帰りの雪ちゃんがいた。昨日の歓迎会の後、どうしても雪ちゃんと話したくなって、ダメ元で連絡した。彼女は翌日の今日日勤で、仕事の後でよかったらとひとつ返事で来てくれたのだ。
 彼女とは新人の頃から時々こうしてお泊り会をする。仕事の愚痴やプライベートの悩みなど、彼女が聞かせてくれる時もあるし、私が聞いてほしい時もある。

「ただいまぁ。ごはん! 良い匂いがする!」
「久々のお泊り会なので。がんばって作ってみました」

 私だって、できないことはないのだ。ひとりだと面倒だからしないだけで。
 テーブルの上に並ぶ料理は、アボカド好きな彼女のためにアボカドとツナのチーズ焼き、ハンバーグのトマト煮込みと明太子入りのポテトサラダ。お酒を飲むかどうするかわからなかったので、おつまみにも食事にもなりそうな料理を選んだつもりだ。作り方はもちろんレシピサイトを見ながらだけど。普段作らない人間はそんなものだ。

「なんか手伝うー?」
「いいよ、働いてきたんだから座ってて。お酒飲む? ビールと缶のカクテル買ってあるよ」
「んー……今日はいいかな。冷たいお茶が欲しいです」
「そう?」

 私はグラスをふたつとお茶のペットボトルを持って、テーブルに戻る。椅子がふたつだけのコンパクトなテーブルだが、ひとり暮らしでたまに友人が来るだけなのでこれくらいがちょうどいい。

「うん、だってさ。なんか話したいことがあるんでしょ? 酔っぱらったらちゃんと聞いてあげられないし」

 テーブルに頬杖をついて、雪ちゃんがにこりと笑う。わかってくれていたことがうれしくて、私はうっかり目が潤んでしまいそうになった。

「雪ちゃん! ありがとおぉ!」
「長い付き合いだからね、なんかあったのかなってくらいわかるわよ。ほら、食べながらでいいから話してよ。私も食べながら聞くから」

 まずは料理を挟んで対面に座り、ふたりそろって手を合わせた。


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