もう一度 恋をするなら

「……おっも。いや、話してくれてうれしいんだけど……おっもいわ。びっくりした。酒があった方がよかったかしら」
「ご、ごめん。今から飲む?」
「いやいいけど。うん、思っていた以上に真剣な話だったから、ちょっと心の準備が足りてなかっただけ」

 ハンバーグとアボカドの料理を食べ終えた彼女は、ちまちまとポテトサラダを食べながら時々考え込むように箸を止める。私は食べながらだったけれど、途中からは話すばかりに気がいっていてまだハンバーグが半分ほど残っている。
 雪ちゃんとは長い付き合いだけれど、これまで家のことを話したことはまったくなかった。あまり折り合いがよくないということだけは漏らしていたけど、雪ちゃんも何かを察してか深く聞いては来なかったのだ。

「……つかそんだけ振り回されて結局離婚しちゃってるんだ、燈子の両親」
「そうなの。転校させられてから一年たって、すぐ。看護大学に入って私が寮生活になってすぐ」

 独り立ちできるのを待っていたのか、それともふたりだけになって関係が破綻したのか……いや、もともと破綻していたか。何せ、あれだけ怒っていたくせに父の単身赴任先に行けば父の不倫相手がいた。そこでまたひと修羅場である。
 修羅場ふたつ立て続けに聞いた直後、私はなんだかバカバカしくなってしまった。さっさとこの親から独り立ちして、自分で生きていかなくてはと思ったのだ。だから看護大学に入学してすぐ寮に入り、奨学金とバイトでどうにかやりくりした。両親に頼りたくないというより、頼らず生きられるようにならなきゃという強迫観念の方が強かった。

 そうしてしばらくして離婚の報告を母から電話で聞いた。何があったか私は聞かず「よかったね」とだけ言ってすぐに電話を切ってしまった。ぐずぐずと理由を話し出しそうな雰囲気だったので、それは拒否したかった。

「思えばまあ、子供だったんだけどね。今となっては大人げない態度をしたけど、もう振り回されたくないし今もあんまり関わりたくない」

 今はもう、どちらにも私から連絡することはない。だから父は連絡先は知っているけどもう声も聴いていないし、母は時々連絡してきて会いたそうではあるけれど。何回会ったかな、ちょっとカフェでお茶する時間を片手で数えるくらいだ


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