もう一度 恋をするなら

 私、今井燈子(いまいとうこ)は『東央(とうおう)総合医療センター』で看護師として働いている。看護大学を卒業して最初の勤め先なので、今年で勤続八年目だ。

 十階建ての建物が三棟並び、中央が一号館で両端に二号館と三号館があり各階渡り廊下で繋がっている。三階までは外来と検査室、手術室、他売店や銀行、カフェテリアなどが占めていて、四階から上に病棟と医局がある。
 三棟の中で一番大きな一号館、その五階病棟が第一内科病棟となっていて、四月からの私の勤務場所だ。昨年度まで三年ほど外科病棟に所属していたが、色々あって異動になった。新人の頃お世話になった内科医が内科部長となったので、拾ってもらえたのだ。
 ありがたいことに、異動と同時に看護主任という肩書きもいただけたので、私としては良いことだらけの異動だった。大きな医療センターなので、部署ごとの看護師の数もかなり多い。半月が経って少し慣れてきた頃だ。
 今日は朝8時からの勤務で、余裕をもって三十分前に病棟へ向かう。既に朝食の配膳作業が始まっていて、職員がカートを押して各病室を回っている。
 ナースステーションに入ると、夜勤担当の看護師が数人徹夜明けの眠そうな顔で各々仕事をしていた。

「おはようございます」

 挨拶を交わしながら中央へ進むと、丸いテーブルでパソコン作業をしていた看護師に声をかけた。

「おはようございます。中川さん、お疲れ様です」

 昨夜の夜勤当番責任者の中川愛莉さんだ。ふたつ年下だが、このフロアにおいては彼女の方が先輩になる。私が近づくと彼女はパソコン画面から顔を上げた。

「おはようございます。今井さん、早くないですか?」
「うーん、余裕をもって? 引継ぎ内容、事前に聞いておきたくて」


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