もう一度 恋をするなら
「ああ、なるほどね。もちろん話を進めてみてください。いざ実現となればシフト表にその勉強会の時間も必要になるわね」
「そうなります。……いいんですか?」
「ええ、ぜひお願い。……多分、今がタイミングもいいんじゃないかと思うわ」

 あっさりと許可が下りたことにももちろんだが、タイミングという言葉に私は首を傾げた。

「タイミング、ですか」
「そう。以前にも一度、その話が出たことがあったのよ。当時の内科部長は言うなれば医師至上主義という人だったから、必要ないの一言で終わってしまったけどね。看護師に知恵をつけさせるななんて時代錯誤……失礼、まあ、時代が追い付かなかったのよ、主に一部の医師にとって」
「師長師長、失礼とか言いつつ全部言ってしまってます……」

 師長にも、何やら過去に色々とあったらしいと伺えるお言葉だ。

「言いたくもなるのよ、本気で腹が立ったから。でも、今は笹井先生が内科部長でしょう。あの人なら柔軟だしむしろ協力してくれるんじゃないかしらね。まあ、笹井先生にはそれとなく話しておくから、協力が必要になったら言ってちょうだい」
「ありがとうございます。助かります」
「ところで、どこの製薬会社のMRにお願いするの?」
「……えー、そこはまた中川さんと話します」
「お願いね。ああ、でも必ず今井さんも噛んでおいて。実績積んでおいてほしいから」
「実績ですか? ……わかりました」

 なんの実績だろうと思いつつ、確かに中川さんに任せておくのも少々……かなり不安なので協力は惜しまないつもりでいる。許可はあっさりもらえたので、これで計画さえたてばあとは実現が早い。私は礼をして看護師長室を後にした。
 そして勉強会に協力してもらうMRに関してだが、そう、実は別に帝生製薬でなくともよいのだ。協力を申し出てくれるところであれば。

 だけどこれが先日の雪ちゃんのお泊り会以降、ずっと探している弓木くんとの接点にできる一番だったりもするのだ。これでは公私混同……いや違う、仕事として必要なことが偶々、プライベートとしても良い方向に働いているだけよ、うん。
 若干の罪悪感には敢えて蓋をしておいた。
 多少の公私混同は仕事の成功でお返しさせてもらおう。
それに、あまり浮かれてもいられないのは、看護師向けの勉強会を開くなら看護師全体の理解も得られなければいけない。ある程度やる気のありそうな看護師の人数を集めてからでなければ、依頼するにも申し訳ないだろう。
 弓木くん云々より先に、ちょっと忙しいことになりそうだった。
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